高品質なぶどう

近年、長野県産ワイン「NAGANO WINE」は品質の面で日本のワインをリードするようになってきました。その理由の一つに、気候など自然条件の点でぶどう栽培に適していることが挙げられます。

雨が少ない

生育が進み、収穫期を迎える夏から秋に雨が多いと、良いぶどうづくりはできません。例えば、内陸部と比べて雨量が多い沿岸部に位置する、宮崎県延岡市の年間降水量が3174mm、神奈川県小田原市が2143mmであるのに対して、松本市は943mm、上田市は868mmという少なさ。ぶどう産地として知られる甲府市の1135mmも下回っています(2012年/気象庁データ)。長野県全体としても雨量が少なめで、ワイン用ぶどう栽培に適しているといえます。

日照時間が長い

品質の良いワインづくりの条件となる、ぶどうの糖度や酸度を高めるためには、日照時間が長いことも大切。雨の少ない長野県は日照時間が長めです。過去30年(1981〜2010年/4月〜10月)の日照時間で比べると、延岡市が1232時間、小田原市が1107.4時間であるのに対して長野市は1238時間、松本市は1253.1時間。春から秋にかけてのぶどう栽培に大切な時期、南国宮崎や温暖な小田原よりも日照時間が長く、この点でも、ぶどう栽培に有利な条件を備えています。

昼夜の温度差が大きい

内陸性気候の長野県は、昼夜の温度差が大きいという特徴があります。夜の気温が下がると糖度が高まり、ぶどうの着色が良くなります。また、十分な酸味も残ってワイン用ぶどうにふさわしい生育が可能になります。人間同様、植物も夜間の温度が高いと呼吸量が多くなり、たくさんのエネルギーを消耗しますが、気温が低ければ活動が抑えられて余計なエネルギーを使わずに済み、良い成熟が迎えられるからなのです。

水はけが良い

全国の中では雨が少ない長野県ですが、ボルドーなど欧州の名産地と比べれば多いことも事実。しかし、「信州ワインバレー」の名が示す通り、県内にはいたるところに傾斜地があるため、雨が降っても水はけに有利です。透水性の高い、大小の河川が運んだ小石や砂混じりの土壌も各地に広がっています。

また、メルローの名産地として知られる塩尻市の桔梗ヶ原は火山灰の土壌ですが、小石混じりの礫層に火山灰が堆積しているため地下水位が低く、水はけが良好です。傾斜地と土壌の質とが相まって、水はけの良い畑を生み出しています。

適地・適品種栽培ができる

ボルドーやブルゴーニュをはじめ、銘醸地といわれるワイン産地では、その土地に適したぶどう品種が栽培されています。長野県は南北に長く、各地で温度差などが少しずつ異なるため、気象条件に合わせて多彩な品種のぶどう栽培を行うことが可能です。

海外の研究者が発表した産地の気候とそれに適した品種に関するデータを参考に、長野県各地の気象条件を見ても優位性が裏付けられます。例えば、塩尻市はボルドーやブルゴーニュ南部地方、東御市や高山村はシャンパーニュやブルゴーニュ北部地方、上田市は北イタリアなど、名産地に近い気象条件*をそれぞれ備えています。

*ワイン研究で世界に知られるカリフォルニア大デービス校の研究者、ウィンクラーとアメリンが提唱した気候区分に基づいて、4〜10月における10℃以上の気温の積算値「有効積算温度」で比較。

長野県のワイナリーで取り扱っている主なぶどう品種

CABERNET SAUVIGNON カベルネ・ソーヴィニヨン

フランス・ボルドー地方から世界中に広まった最も有名な赤ワイン用品種。世界中で栽培されているが生産性は低めなため高級品種として扱われることが多い。色が濃厚で渋味、酸味、芳香の全てに富む。日本での総栽培面積は少ないが、長野県での栽培は増えつつある。

MERLOT メルロー

フランス・ボルドー地方原産で赤ワイン用の重要品種。非常に口当たりの良いなめらかな高品質なワインがつくられ、世界各地で生産量が増えている。長野県の桔梗が原バレーは、日本で初めてメルローの栽培研究を推進し根付かせてきた経緯があり、国際的にも評価の高いワインを生み出している。

CONCORD コンコード

長野県ではナイアガラに次ぐ栽培量を誇る。アメリカ原産のラブラスカ種で果汁用原料となることが多い。アメリカでは東部の雨の多い地帯で主に栽培され、日本ではほぼ長野県の桔梗ヶ原ワインバレーで栽培されている。軽やかな渋味の少ないフルーティーなワインができる。

MUSCAT BAILEY A マスカット・ベーリーA

日本のワインの父と呼ばれる川上善兵衛が日本の風土に合わせて開発した国産赤ワイン用の代表的品種。ベーリー種とマスカット・ハンブルグ種の交配品種。色が濃く、香り高くまろやかな味わいのワインになる。

PINOT NOIR ピノ・ノワール

フランス・ブルゴーニュ地方の重要品種。世界で最も高値で取引されるロマネ・コンティなどの上質ワインとなることでも知られる。小粒で香り高いピノ・ノワールは、適した土地、気候が限られるため栽培が難しい品種である。長野県内での成功例が増えている。

CABERNET FRANC カベルネ・フラン

カベルネ・ソーヴィニヨンの原種。冷涼な気候でも良く育ち早熟な品種で、フランス・ボルドー地方で最も多くつくられている。一般的にワインのバランスを整えるために、補助的に使用されることが多い。渋味はあるが強すぎず繊細な味わい。

SYRAH シラー

フランスのコート・デュ・ローヌ地方を原産地とする品種で、温暖で昼夜の寒暖差が激しい気候と水はけのよい土地で良く育つ。果皮の色素が多いため色合いがとても濃いのが特徴。ヨーロッパではややマイナーな存在だが、オーストラリアではシラーズと呼ばれ国内最大の生産量を誇る。

NEBBIOLO ネッビオーロ

イタリア・ピエモンテ州原産のイタリアを代表する最高級の赤ワイン用品種。栽培に適した条件に合う土地がなかなかなく難しい品種。しっかりとした渋味とコクがあり、長期にわたり熟成すると旨味が増し、トリュフなどの香りが現れる。

ASAMA MERLOT 浅間メルロー

マンズワインが浅間種(善光寺種×シャルドネ種)とメルロー種を交配して独自に生み出した。ぶどうの粒が小さく、スパイシーで色の濃い赤ワインが得られる。

BAILEY ALICANTE A ベーリー・アリカントA

果肉が真赤な希少醸造用品種。日本のワインの父と呼ばれる川上善兵衛が交配。一般にはブレンド用に栽培されている。耐病性が高く、栽培が比較的容易である。

BLACK QUEEN ブラッククィーン

日本で川上善兵衛によってベーリー種とゴールデンクィーン種から育種された国産赤ワイン用品種の一つ。酸味と渋みが強く野性的なワインとなる。長い熟成期間を必要とする。

YAMA-BUDO ヤマブドウ

古来より日本の野山に自生している。このヤマブドウにワイン専用種を交配させた、数々の日本特有ワイン用品種がある。色濃く酸味の強いワインとなる。

SHOKOSHI 小公子

ヤマブドウ研究家である澤登晴雄氏が開発した、中国やヒマラヤ、日本産のヤマブドウを掛け合わせてつくられた交配品種。

YAMA SAUVIGNON ヤマ・ソービニオン

山梨大学が開発したヤマブドウとカベルネ・ソーヴィニヨン種を交配した品種。湿度の高いところでも色濃く果実味をもった酸のしっかりしたワインとなる。

KYOHO 巨峰

ぶどうの王様といわれ、大粒の黒ぶどうで人気の高い日本の主要品種。キャンベルの巨大変異種である「石原早生」と大粒白色種・ロザキの巨大変異種であるセンテニアルを交配してつくり出された。

CHARDONNAY シャルドネ

世界中のワイン産地で栽培される白ワインの代表的品種。フランス・ブルゴーニュ地方の原産種で、ぶどう自体に品質固有の風味を持たないため、つくり手やその土地ごとにさまざまな味わいのワインに仕上がる。日本では長野県の千曲川ワインバレーがシャルドネの産地として注目されている。

SAUVIGNON BLANC ソーヴィニヨン・ブラン

世界中で栽培されている品種。フランスのボルドー・ロワール地方が有名だが、近年ではニュージーランド産も人気。日本での栽培面積は比較的少ない。基本はすっきりした飲み口だが環境によって風味が大きく変わり、ハーブや青草を思わせる独特な香りを持つ。

KERNER ケルナー

ドイツ南西部のヴュルテンベルク地方でトロリンガー種とリースリング種の交配によってつくり出された。日本では寒冷地で栽培され、特に北海道での栽培が多い。爽快なマスカットの香りを有し、みずみずしい柑橘系の風味を持つ。

NIAGARA ナイアガラ

長野県で最も多くつくられている品種。アメリカ・ニューヨークでコンコード種にキャッサディー種を交配して育成された白ワイン用品種で、ヌーボーワインの人気品種にもなっている。寒冷地で主に栽培され、甘味充分で酸味も程よくあり華やかな香りがある。

RYUGAN/ZENKOJI 竜眼・善光寺ブドウ

中国東北部から日本に入って来たと言われ、古くから長野県の善光寺周辺で栽培されてきた。日本の高温多湿の気候風土に適している。甲州種と良く似ている。

Sémillon セミヨン

フランス・ボルドー地方を代表する品種。果皮が薄く貴腐菌がつきやすいため貴腐ワインをつくる品種として有名。ハチミツやアプリコットの香りがあり、穏やかな酸味がある。一般的にブレンド用で用いられ辛口にも甘口にもなる。

PINOT GRIS ピノ・グリ

ピノ・ノワールの突然変異によってできた。フランス・アルザス地方が代表的な産地で、高貴品種の一つに数えられる。飲みごたえがありつつ主張が強すぎないためどのような料理とも合わせやすく、多くの人に愛されている。

Müller-Thurgau ミュラー・トゥルガウ

ドイツのラインヘッセン、プファルツ地方で多く栽培されている。リースリング種とシルバーナ種の交配種。フルーティーで軽やかなワインとなる。冷涼な気候に適している。

MUSCAT マスカット

生食兼用種であり日本を代表する白ワイン品種。ほとんどの場合、顕著な甘い花の芳香を有する。世界中で栽培されており、品種の幅広さや数から最も古く栽培化されたぶどう品種である可能性が示唆されている。

SHINANO RIESLING 信濃リースリング

マンズワインがシャルドネ種とリースリング種を交配してつくり上げた独自の白ワイン用品種。リースリング種に通じるぶどうらしい華やかな香りに富む。

DELAWARE デラウェア

アメリカ原産の自然交配種で、種なしぶどうとして最も親しまれている。ワイン用及び生食用としても定着。甘口のフルーティーな若飲みタイプ。

SEIBEL 9110 セイベル9110

フランス人ぶどう栽培学者アルベール・セイベル氏が交配してつくり出した白ワイン用品種の一つで個々に番号を持つ。根あぶらむし抵抗性があり、接ぎ木しないで栽培可能。ワインは辛口で軽い芳香がある。日本では長野県から北地域で栽培される。

CHARDONNAY DE CORAIL シャルドネ・ドゥ・コライユ

マンズワインが甲州種とシャルドネ種を交配して独自に育て上げた。コライユは、珊瑚色という意味。

Sun Sémillon サンセミヨン

山梨果樹試験場においてグローセミヨン種と笛吹ぶどうから誕生。栽培容易な品種であるが、寒冷地では果実が十分に熟さない。香りが華やかで、味はバランスが良く、フルーティーで豊かなボディをもつ。