vol.73ドメーヌヒロキ
横山弘樹さん

地元のブランドとなる
愛されるワイナリーを目指して

vol.73ドメーヌヒロキ<br>横山弘樹さん<br><br>地元のブランドとなる<br>愛されるワイナリーを目指して

池田町に待望のワイナリーが開設

長野県北西部、安曇野の北部に位置する池田町。
北アルプス地域にあり、塩の道として古くから利用された千国(ちくに)街道の宿場町として栄えました。

年間降水量が8001200mm程度と少なく、北アルプスから北寄りの風が吹き抜け、1年を通じて風通しがよく、昼夜の寒暖差が大きいため、ワイン用ぶどうの栽培に適しています。

2020年7月、北アルプス蝶ヶ岳から白馬三山までを見渡せるぶどう畑の一角に、池田町初のワイナリー「ドメーヌヒロキ」が誕生しました。

オープニングセレモニーには、池田町の町長や県議、長野県北アルプス地域振興局の局長などの要職も応援に駆けつけたという、町に嘱望されている、注目のワイナリーです。

もともと、池田町の青木原地区では、1988年からワイン用ぶどうが栽培されていました。
青木原産のソーヴィニヨン・ブランを100%使用したワインは何度も国産ワインコンクールで受賞し、「良いワインは良いぶどうから」と言われるように、そのぶどうの品質の高さに定評があります。

2004年には、池田町がワイン用ぶどう産地として盛り上げるべく、耕作放棄地を農地へ作り変える事業に着手、青木原の隣、渋田見地区を造成しました。

しかし、まだ新しい取り組みだったために名乗りを上げる人が少なく、3年もの間空き地に。
そこで白羽の矢がたったのが、のちにドメーヌヒロキのオーナーとなる横山弘樹さんの父、嘉道さんです。

当時、農協の営農技術員として働いていましたが、家でゆっくり過ごそうと早期退職したばかりでした。オファーはあったものの、続けていくには年齢の心配もあり、東京で就職していた弘樹さんに相談します。

すると弘樹さんは「もともといつかは池田町に戻ろうと思っていたから」と快諾、親子でワイン用ぶどうの栽培をはじめることになったのです。

父、嘉道さん。池田町のワイン用ぶどう栽培の先駆者として、北アルプスワインぶどう研究会の会長も務める、頼れる存在

メルシャンの契約栽培農家に

畑を引き受けた2007年から、弘樹さんはメルシャンの契約栽培農家としてメルシャンの技術指導員に基礎から栽培を学び、「ワインの味を知らなければ、どんな味のぶどうをつくったらよいかもわからない」と、テイスティングの勉強会にも3年通いました。

池田町初のワイナリー誕生

2017年、町が鵜山(うやま)地区を造成すると、ワイナリー開設を見据えて、自社用のぶどう栽培もはじめることに。

白ワイン用には、弘樹さんが好きな品種で、30年以上前から池田町で栽培されてきたソーヴィニヨン・ブランを主に植栽、シャルドネも植えました。

赤ワイン用には、メルローと、カベルネ・ソーヴィニヨンを植えました。

メルシャンの契約畑でメルローを栽培してきた経験から「色もよく出るし、香りも良いので池田町にあっている品種だと思います」と、弘樹さん。

カベルネ・ソーヴィニヨンは、メルローより収穫が1〜2週間遅い品種なので、収穫までに糖度が上がるか心配ですが、塩尻市でも栽培されている品種です。池田町は塩尻市より1〜2週間早く収穫できるのでうまくいくのではないかと考えています。

そのほか、試験的にカベルネ・フランとプティ・ヴェルトも栽培しています。

シャルドネやソーヴィニヨン・ブランなどの白ぶどうは、除葉せず、酸が抜けないようにしています。
メルローやカベルネ・ソーヴィニヨンなどの黒ぶどうは、表現したい味わいや、色づきを出すために日光があたるよう除葉します。
葉を落としすぎても糖度が上がらないので、ぶどうの木をよく観察し、キャノピーマネジメント(樹冠管理)に気を配っています。

北アルプスから風が吹き抜け、風通しが良いので病気になりにくい。傾斜は、収穫時には大変だが、霜が下に流れていき凍害になりにくいという利点も。自社畑は2ha。契約している畑もあわせると5haの畑を管理しています。

地元で愛されるワイナリーに

2018年3月に池田町がワイン特区に認定されると、20207月、満を持して自社ワイナリー「ドメーヌヒロキ」を開設しました。

醸造は、安曇野ワイナリーに10年以上務め、醸造にたずさわってきた内川雄一郎さんが担当しています。
嘉道さんが会長を務める北アルプスワインぶどう研究会で知り合った、大切な仲間です。

「彼はとてもまじめで、丁寧にワインを造る人です。同世代だし、しかも同じ池田町出身でね。話も合うし、本当に内川さんでよかった」と、弘樹さんはおだやかに微笑みます。

収穫のタイミングや使用する酵母など、一緒に話し合い、ワインの方向性を決めています。

初仕込の2020年ヴィンテージのソーヴィニヨン・ブランは、収穫時期をずらして、「ソーヴィニヨン・ブラン」と「ソーヴィニヨン・ブラン・エレガント」の2種類を醸造。
通常どおりに収穫した「ソーヴィニヨン・ブラン」はフレッシュな果実味を感じる、すっきりした味わいに。ぎりぎりまで待って収穫した「ソーヴィニヨン・ブラン・エレガント」は香り高くふくよかな味わいになりました。

小規模ワイナリーならではの、手間ひまのかかったこだわりのワイン造りをしています。

500Lと1000Lの丸いタンクに、1500Lと2000Lの四角いタンクが壁一面に並ぶ

ワイナリーのロゴマークは横山家の家紋、五瓜に抱き茗荷(ごかにだきみょうが)
ショップでは有料で試飲も。同じ品種の畑違いを比べて楽しむこともできます 30mℓ、150円〜

北アルプスから吹き抜ける風、青空のもと眼下に広がる田園風景。
池田町に惹かれ、移住してワイン用ぶどうの栽培をはじめる人が増えたり、サッポロビールの安曇野池田ヴィンヤードもできました。現在、池田町のワイン用ぶどう栽培面積は26haまで拡大しています。

自社醸造所を開業した現在でも、メルシャンと契約している畑は2ha。シャトー・メルシャン安曇野シリーズのワインに使用されるシャルドネとメルローを栽培しています。そのほか、サッポロビールとも1haの畑を契約、メルローを栽培しています。

県の地層調査でぶどう畑に1mほど穴を掘ると、丸い石が地表近くに積もっていることが分かりました。石が丸いということは、川を流れていたということです。
ワイナリーから2kmほど下った場所を流れる高瀬川の河原が隆起して山になったのではないかと考えられ、想像力が掻き立てられます。
土自体は柔らかく、下の方まで草の根が張っていました。砂礫で水はけがよく、ぶどう自体は下までしっかり根を張ることができる、地層からもぶどう栽培に適している土地ということが証明されました。

「池田町のワインはこれから。どんなテロワールになるのか楽しみです」と語る弘樹さん。

ワイナリーでバーベキューをしながらワインを楽しむイベントや、季節に合わせて栽培や収穫体験ができるイベントなど、小規模でアットホームなイベントを計画し、地元の人から愛され、町のブランドとなるようなワイナリーになりたいと、さらなる挑戦が続きます。

(取材・文/坂田雅美  写真/平松マキ)

横山弘樹さん

(よこやまひろき)

1978年生まれ。地元の高校を卒業し、東京の大学へ進学。卒業後はそのまま東京で会社員として働いていたが、父と一緒にワイン用ぶどうの栽培をはじめるべく帰郷。
長年、大手ワイナリーの契約栽培農家を務めている強みを生かして、2020年ドメーヌヒロキを開設

ドメーヌヒロキ

所在地 〒399-8602 長野県北安曇郡池田町会染24455-2
TEL・FAX 0261-25-0024
URL 
domainehiroki  
ショップ 10時〜17時(月休)
FAXでも注文を受け付けています
   
※来訪するときは事前に電話連絡してください

 
2021年11月23日掲載