vol.66 496(シクロ)ワイナリー
飯島 規之さん、祐子さん

八重原の自然と人に寄り添う
ワインづくり

vol.66 496(シクロ)ワイナリー<br> 飯島 規之さん、祐子さん<br> <br> 八重原の自然と人に寄り添う<br> ワインづくり

ワイナリー完成とともに2019年は初仕込み

飯島規之さんと祐子さん夫妻が営むシクロヴィンヤードが、2019年1月にワイナリー建屋を完成させて「496ワイナリー」となりました。3月21日、春分の日にショップスペースとともにオープンし、東御市で9番目となるワイナリーが誕生しました。

フランス語で自転車を意味する「cyclo(シクロ)」を表した「496」という数字は「完全数※1」といい、その数以外の正の約数の和と等しい自然数のこと。古代ギリシャでは神秘の数字といわれ、この発見に祐子さんは「偶然ながら、うれしかった」と言います。

白い壁に緑色の屋根は「赤毛のアン」が住むグリーンゲイブルスのイメージで、八重原の田園風景にすがすがしく佇みます。

高い天井に梁がのぞき、山小屋のような雰囲気に。外壁にはロゴマークが掲げられた
※1たとえば「6」はその数字以外の約数の和「1+2+3」と等しい。「28=1+2+4+7+14」も完全数である

醸造スペースは充分な高さが確保され、天井には梁がのぞき、白い空間にアクセントを加えています。日射を防ぐため壁に窓は設けず、天井の一部を採光のための窓にしました。搬入口は北に設け、収穫したぶどうに極力日が当たらぬよう配慮されています。

また、水はけの良さを考慮して排水のためのスリットは太めに。さらに屋内が一定の温度に保たれるよう、寒冷地仕様の断熱材がしっかり入れてあります。

10月。ワイナリーに収穫したばかりのピノ・ノワールが持ち込まれ、プレスにかけられました。続いてソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、メルロ、そして11月のアルモノワール、最後のシードルまで仕込みは続きました。

ワイナリー完成とともに2019年は初仕込み

「自分たちで思うようにできるのは、やっぱりうれしかったですよ」と祐子さんはワイン造りの喜びを語ります。

こう言えるようになるまでに、じつは辛いできごとを乗り越えなければなりませんでした。「どんなに苦労しても報われないことがある」と祐子さんがポツリと言うと、寡黙な規之さんが珍しく「苦労じゃない。努力と言うんだ」と語気を強めました。

プロのサイクリストとして戦ってきた規之さんの「やってすぐに結果が出るわけではない」「なくしたものは手放す」という「スポーツマンの考え方に救われた」と祐子さんは言います。

一方で、思いもよらぬうれしいできごともありました。「パシュートシャルドネ」が人気コミック『神の雫』の「最終章マリアージュ19巻」に取り上げられ、原作者である亜樹直さんが、ホリエモンこと堀江貴文さんとともにワイナリーを訪れたのです。

「たくさんの方の力をお借りしながら、やってこられました」と祐子さん。そして「長野県農業大学校の研修部で学び、ワイン生産者アカデミーに通い、長野県に育ててもらっている。高橋さんが私たちの先生です」と、長野県工業技術総合センター(食品技術部門)の高橋祐樹さんの名を挙げます。

「いいワインをつくって、みなさんに恩返しをしていきたい」という祐子さんの言葉に、規之さんもうなずきます。

2020年は、自社初醸造のワインがいよいよ発売されます。先がけて3月20日、春分の日。ワイナリー1周年の日に「パシュート ソーヴィニヨン・ブラン 2019」がワイナリー限定発売されました。

たくさんの飲み手が規之さんと祐子さんの造るワインを楽しみに待っています。

『神の雫』誌面コピーには、原作者である亜樹直さんの直筆サインが。畑で掘り起こした幸せのシンボル、馬蹄とともにショップスペースに飾られている
カウンター背後の棚にも、恩師などからの贈り物が飾られている

飯島 規之さん、祐子さん

いいじま のりゆき、ゆうこ

飯島さんは元自転車競技の選手で、中距離種目の第一人者として長年にわたり活躍した。特に4km個人追い抜き競走で数々の実績を上げている。現役引退後はワインづくりをするため、中学校時代の同級生だった妻の祐子さんとともにさいたま市から東御市へ移住。2014年から八重原で本格的にぶどう栽培を開始した

496(シクロ)ワイナリー/シクロヴィンヤード株式会社

所在地 東御市八重原1018
TEL cyclo-vineyards@ueda.ne.jp(畑作業のため問い合わせはメールでお願いします)
URL https://www.cyclovineyards.com/

2020年05月11日掲載