Vol.7 さまざまなタイプのワイナリー

Vol.7 さまざまなタイプのワイナリー

「マンズ・レインカット栽培法」

今回もアルカンヴィーニュを出て、小諸市のマンズワインと東御市のリュードヴァンに研修に伺いました。

最初に訪ねたのはマンズワイン。工場長の川俣昌大さんから社史をお聴きし、工場内の見学、そしてワイナリー近辺の畑を案内していただきました。

マンズワインの栽培方法といば、ヨーロッパ式の「垣根づくり」と「簡易雨避け装置」を組み合わせて考案された、「マンズ・レインカット栽培法」が有名です。 といっても、今はまだ生育期なので実施されていませんでしたが、ブドウの実がなってくると、支柱のうえにビニールの傘をかけます。 こうすることで雨が当たらなくなり、病気のない健全なブドウが収穫できるのです。

1987年に特許を出願し、1996年に特許登録され、1999年には考案者である、マンズワインに勤めていた志村富男さんが科学技術庁長官賞(創意工夫功労者表彰)を受賞しました。 マンズワインのフラッグシップ「ソラリス」シリーズのブドウは、すべてこの「マンズ・レインカット栽培法」で育てられているそうです。

上田市塩田地区にある、東山の畑も案内していただきました。 ここはワイナリーから千曲川を挟んで反対の左岸に位置します。

ソラリスシリーズのなかでも最高峰のワインのひとつ、「東山カベルネ・ソーヴィニョン」が生まれる畑です。 さすが、管理の行き届いたきれいな畑でした。

大きなステンレスタンクがいくつも並ぶ光景は、まさに圧巻

荒廃農地にもう一度息吹を吹き込む
リュードヴァンの取り組み

マンズワインの次に訪れたリュードヴァンでは、代表の小山英明さんにワイナリーができるまでの経緯などを説明していただきながら、畑を案内していただきました。

もともとこの地域はリンゴと桑の産地でしたが、小山さんが東御市に移り住んだ2006年頃は所有者の高齢化などで耕作放棄され、雑木林になっていたそうです。 今ある畑のほとんどが、その雑木林を開墾しながら増やしてきたものだそうです。これほどの畑になるまでには、大変な苦労があったと思います。

小山さんは地縁があって東御市に移住してきたわけではないので、はじめは地元の方々の信用を得られず、畑を貸してもらうのも大変だったとか。しかし、今では小山さんの熱意が認められ、逆に「畑を借りてほしい」と言われるほどの関係になれたとおっしゃっていました。

私がワイナリー建設を考えている場所は地元なので、そうした問題はないと思いますが、アカデミー生のなかには県外から移住を希望している方もいます。 土地を買ったり借りたりしなくてはいけないので、近隣の方との信頼関係が大切だと教えていただきました。

ワイナリーから一番標高の高い畑までは歩いて10分ほど。その間、色々とお話を聴くことができたのですが、ブティックワイナリー設立を目指しているアカデミー生は皆、その熱意ある言葉に魅せられ「小山さんを目標にするんだ!」という気持ちで聴いていたと思います。

マンズワインはキッコーマン傘下の大企業ですし、リュードヴァンは個人経営のブティックワイナリーなので2つのワイナリーは全く違う形態です。 スタッフの人数も違えば、生産量や売上高も違います。 さまざまなタイプのワイナリーからお話をお聴きし、自分の想い描いているワイナリー像に近づけるようにたくさんのことを学ばせていただけるのは本当にありがたいことです。

著者

成澤篤人

シニアソムリエ
1976
年長野県坂城町出身。イタリアンレストラン「オステリア・ガット」ほか長野市内で3店舗を経営。NAGANO WINEを普及するための団体「NAGANO WINE応援団運営委員会」代表。故郷・坂城町にワイナリーをつくるため、2015年春からアルカンヴィーニュ内に設置された日本初の民間ワインアカデミー「千曲川ワインアカデミー」で第1期生として学びます。

日本ワイン農業研究所
アルカンヴィーニュ ARC-EN-VIGNE

ARC」は「アーチ(弧)」を意味し、人と人をワインで繋ぐという寓意を込めています。フランス語で虹のことを「アルカンシエルARC-EN-CIEL」(空にかかるアーチ)といいますが、その「空CIEL」を「ブドウVIGNE」に代えて、名づけられました。ブドウ栽培とワイン醸造に関する情報を集積する、地域のワイン農業を支えるワイナリーとして、また、気軽に試飲や見学ができ、ワインとワインづくりについて楽しく学び、語り合うことができる拠点です。

http://jw-arc.co.jp

2015年06月30日掲載