Vol.10 ワイン造りに英語は必須

Vol.10 ワイン造りに英語は必須

まずは英訳の宿題から…3

最新のワイン情報や文献は、ワインの伝統国の言葉であるフランス語や英語のものが多く、ソムリエの大会やシニアソムリエの試験では英語の設問がたくさん出題されます。

今回の講師であるフード&ワインジャーナリストの鹿取みゆきさんからは、英語の重要性についてうかがいました。鹿取さんは『日本ワインガイド〜純国産ワイナリーと造り手たち』などの著者で、現在、長野県がおこなっている県産食材を推進する事業「おいしい信州ふーど(風土)」の大使も務めていらっしゃいます。

鹿取さんからは「Growing Cabernet Franc in the Finger Lakes」という、アメリカのニューヨーク州フィンガーレイクスにおけるカベルネ・フランの生育について英語で書かれた記事を訳す宿題が出されていたので、まずはこちらの話題から。

アメリカのワイナリー事情

記事を訳した内容を簡単にまとめると…。

フィンガーレイクスでカベルネ・フランを育てる上での注意点として、樹勢を抑えることが重要である。そのためには、カバークロップ(芝などを植える)をしたり、ブドウの樹のなかで競合状態をつくったり、あるいはクローンと台木の選定をする必要がある。また、実際に育てている人を訪ねて、クローンと台木の相性 、長梢選定 、収穫時期の決定要素 、慣行農法 、密植での影響などを聞いて、上質なブドウを得るためにどうすればよいのか探ることが必要である。

という内容でした。

 アメリカのワイン産地というと、西海岸のカリフォルニア州やワシントン州が発展していましたが、近年では東のニューヨーク州でもワイナリーが増大しています。 先日、コーネル大学(アメリカ・ニューヨーク州イサカ市)のテリー・アクリ教授が来日し、長野県のワインの生産状況が知りたいと、2日間に渡りワイナリーを視察されました。

私も初日に同行させていただきましたが、ニューヨーク州でワイナリーが発展していく過程でのいろいろなお話は、長野県におけるワイン産業にとっても参考になることが多かったです。

その様子はNAGANO WINE公式サイト、ワイントピックスより「米国コーネル大学のアクリ教授、NAGANO WINEを視察して高く評価」をご覧ください。

内容を理解することが大切

少し話はそれてしまいましたが、英語の授業は続きます。 NHK Worldで放送された「Winegrowers in the Far East(極東のワイン生産者)」のDVDを見ました。 当然、英語です。この番組は、鹿取さんが山形県のタケダワイナリーの岸平典子さん、山梨県の機山洋酒工業の土屋幸三さん、北海道の10R(トアール)ワイナリーのブルースさんらを訪ねてインタビューをするというものでした。

インタビューの日本語テキストがあったので、何となくは分かったかなぁ…。 学生時代に勉強をしてこなかったのでここで苦戦を強いられるわけです(涙)。ワイン業界に限ったことではありませんが、英語は必須の時代ですね。

ただ、学生時代に習う英語の授業とは違い、文章を正しく訳すというよりは、ぶどうの栽培・醸造をするために必要な言葉・単語を覚え、何を言いたいのか理解することが大切だといいます。

このほか、取材したデータなどから今の日本におけるワイナリーと取り巻く状況についてお話をうかがいました。日本全国のワイナリーやヴィンヤードを1軒1軒丁寧に、そして精力的に取材してまわっている鹿取さんならではの現場に基づいた興味深いお話をたくさんうかがうことができた授業でした。

著者

成澤篤人

シニアソムリエ
1976
年長野県坂城町出身。イタリアンレストラン「オステリア・ガット」ほか長野市内で3店舗を経営。NAGANO WINEを普及するための団体「NAGANO WINE応援団運営委員会」代表。故郷・坂城町にワイナリーをつくるため、2015年春からアルカンヴィーニュ内に設置された日本初の民間ワインアカデミー「千曲川ワインアカデミー」で第1期生として学びます。

日本ワイン農業研究所
アルカンヴィーニュ ARC-EN-VIGNE

ARC」は「アーチ(弧)」を意味し、人と人をワインで繋ぐという寓意を込めています。フランス語で虹のことを「アルカンシエルARC-EN-CIEL」(空にかかるアーチ)といいますが、その「空CIEL」を「ブドウVIGNE」に代えて、名づけられました。ブドウ栽培とワイン醸造に関する情報を集積する、地域のワイン農業を支えるワイナリーとして、また、気軽に試飲や見学ができ、ワインとワインづくりについて楽しく学び、語り合うことができる拠点です。

http://jw-arc.co.jp

2015年09月30日掲載