|旅館 亀清(かめせい)|
NAGANO WINEのBYOができる
碧眼の若旦那が切り盛りする老舗旅館

|旅館 亀清(かめせい)|<br>NAGANO WINEのBYOができる<br>碧眼の若旦那が切り盛りする老舗旅館

明治36(1903)年開湯、110年余の歴史を持つ上山田温泉にある旅館「亀清」は、「碧い眼の若旦那」ことタイラー・リンチさんが切り盛りする宿として知られます。

アメリカ西海岸の港町シアトルで生まれ育ったタイラーさんは、高校生時代のアルバイト先であった日系企業をとおして日本に関心を持ち、留学を含め何度か来日します。

長野県上田市の語学学校で英会話講師を務めていた頃、旅館の娘である磨利さんと知り合います。その後、ともにシアトルへ渡り、結婚。かの地での暮らしが10年ほど経った頃。

義父が他界し、宿を閉めるという話が持ち上がり、かねがね宿の行く末を案じていたタイラーさんは、それならばと自ら後継者に立候補。2005年9月に妻子とともに千曲市へ移住します。

タイラーさんが手づくりした貸切露天風呂「しなの湯」。「星空を見ながら湯に浸かりたい」というお客さんの声に応えた。心尽くしの庭にシナノキも植わる
「紬」をテーマに、少しずつ手を入れている客室。窓から見える緑には、お蚕さんのエサとなる桑の木も混ざる

日本の温泉文化をこよなく愛するタイラーさんは、自らの手で宿の改革に取り組みます。露天風呂を手づくりしたり、ロビーに薪ストーブを据えたり、味気ないコンクリート塀をハンマーで壊して竹垣を施したり。

「本当に少しずつ。まだまだなんです」とタイラーさんは言いますが、タイラーさんが心を砕き、手をかけるごとに、宿の魅力は確実に増しています。

2年前からは、長野県産ワインや地酒のBYO(Bring Your Own=酒類持ち込み可)プランに取り組みはじめました。そのきっかけのひとつに「楠わいなりー」の楠茂幸さんとの出会いがあります。
「楠さんのシャルドネは、ほんとに人生変わるような素晴らしいワイン」とタイラーさんは言います。

NAGANO WINEを楽しむプランには「杏とチーズのワンプレート」がつく
館内の案内板がレトロな雰囲気を醸す

タイラーさんの故郷、シアトルからクルマで2時間半ほどのところにあるヤキマは、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培が盛んで、ワインバレーが形成されています。B&B(ベッド&ブレックファスト)が定着していて、タイラーさんもかつては夫婦でワイナリーめぐりを楽しんでいたといいます。

「うちの宿の10%は外国からのお客さまですが、なかにはワイン好きな方がいて、日本にワインがあることに驚かれることがあります。そうした海外からの旅行客だけでなく、首都圏に住む外国の方、ワイナリーめぐりの文化を持つ方たちに、長野県のワイナリーをめぐる旅のニーズはあると思うんです」

戸倉上山田温泉街歩きマップ外国語版を作成したり、長野県公式外国語ブログなどを通じて、千曲市だけでなく長野県の魅力を世界に向けて発信しているタイラーさん。
「ワインと温泉のコラボレーションは、ヤキマバレーでは考えられないですね」と笑顔で語ってくれました。

 
タイラー・リンチさん

1970年、米国シアトル生まれ。ワシントン大学国際学部に在籍中、神戸へ留学体験あり。卒業後は長野県上田市で英会話講師を勤める。奥さんの磨利さんと結婚後は、10年間ほど地元で貿易関係の仕事に従事。奥さんの実家である旅館の後継者として2005年秋に千曲市へ移住。以来、若旦那として旅館を切り盛りしている。

住所

長野県千曲市上山田温泉2-15-1

電話番号

026-275-1032

営業時間

料金:2名以上1室利用で1名あたり1泊2食10,800円〜
※送迎、BYOについては要相談

アクセス

更埴ICから国道18号経由で20分

URL

http://www.kamesei.jp/

取材・文/塚田結子  写真/平松マキ
2015年12月02日掲載