Vol.1 夢にあふれる同期たちの思い

Vol.1 夢にあふれる同期たちの思い

アルカンヴィーニュ、入学!

私、成澤篤人と申します。現在、長野駅前でイタリアン2店舗(オステリア・ガットラ・ガッタ)、そして善光寺東町で自家製パンのカフェ(粉門屋仔猫)を経営しているオーナーで、シニアソムリエです。まぁ「オーナー・シニアソムリエ」なんていうと、カッコつけてる感がありますが…。

この連載は、その男が「地元坂城町にワイナリーをつくる!」という夢に向かって進んでいく様子を伝えるものです。さて「ワイナリーをつくる!」なんて思っても、「農地は?」「栽培は?」「醸造は?」「経営は?」など、わからないことだらけ。

そこで登場するのが、今年東御市にできた「日本ワイン農業研究所 アルカンヴィーニュ」です。ここは通常のワイナリー施設のほか、次世代のワイナリー起業者を育てるための〝ゆりかご〟的な役割として、アカデミーも開講します。正会員になると、1年に60日間ある講座に参加できるのです。私、こちらの一期生になりました。一期生は23人。

(会員の公募は1年に1回、定員に達した場合は書類選考があります。来年度の募集時期は未定ですが、わかり次第またこちらでもお知らせしますね)

この連載では、これからアルカンヴィーニュでどのようなことを学んでいくのか、その一端をご紹介します。

ぶどう畑は一代では終わらない

4月12日にオリエンテーションがありました。前日までは雨降りの日々でしたが、アカデミーのスタートを祝うかのような良く晴れた空のもと、初めての登校です。10時30分、受付を済ませて教室へ。

まずは、代表取締役である玉村豊男さんのご挨拶がありました。ワイナリー設立の経緯や、アカデミーの趣旨などを説明していただきました。ご存じの通り、玉村さんは作家であり、画家であり、ヴィラデスト・ガーデンファーム&ワイナリーのオーナーでもあり、信州ワインバレー構想推進協議会の会長でもあります。

その後は小西醸造長のご挨拶。小西さんはヴィラデストの醸造長でもあります。そして一期生の23名が全員ひとりずつ前に出て自己紹介。

「地元に土地があるから、ワイン用の畑をはじめてみたい」
「東京でサラリーマンを20年以上続けてきたけど思い切って」
「退職後、好きなワイン造りをやってみたい」
「実家のワイナリーを継ぐので勉強に」
「ワイン関係の仕事をずっとやってきて、最後は造りを」

などなど、本当にさまざまな経歴や想いをもって集まっていらして、個性あふれる方々ばかり。そのなかで、最年長の方がおっしゃっていました。

「このアカデミーは年齢制限がないのが良い」と。

下は26歳から上は64歳までと、年齢も幅が広いんです。それを受けて玉村さんは「ぶどう畑は一代で終わらない。当人が引退したあとでも続けていくもの」と。そうなんですよね。ワイン造りって、長ーい年月をかけて伝承していくものなんです。

通常は、樹を植えてから最低3年間ほどは、実がなってもワインにはしません。ちゃんと美味しいぶどうが採れるまで10年かかるといわれています。

また、天候に大きく左右されるので、晴天が続いて良いワインができても、翌年には雨が多くダメだ…となることも当たり前。生きている間に、本当に納得できるものが造れるかどうかすらわからないんです、ワインって。でも、だからこそ面白いし、魅了されていくんです。

私もそのひとり。自分が「もう死んでもいいかなぁ」と思える風景は、こんな感じ。

——ある日、仕事を終えてワイナリーの眼下に広がる、夕日の沈むぶどう畑を見ると、そこには孫が猫と戯れている。妻がワインを持ってきて一緒に飲みながら「あぁオレの造ったワインまずいなぁ…。まだまだだ。いつかあいつ(孫)が美味しいワイン造ってくれるかな」——

そんな日が来るのを夢見ています。あ、自己紹介では緊張しちゃって、こんなこと言えなかったですけどね。

集まった皆さんには、このアカデミーを終えた後へと続く、それぞれの夢があるのです。年齢や経験、思い描く最終地点は違えど、熱のこもった自己紹介でした。一緒に勉強し、夢に近づけるよう、ともにがんばっていきたいです。

最後はワイナリースタッフの和田さん、櫻山さんのご挨拶。そしていよいよ施設の見学。新品の醸造設備ーーー!!!いずれここで実習があると思うと、心が躍ります。教室の隣にあるテラスもすてきです。季節によって変わる風景も楽しみです。辺りはまだ荒廃地ですが、これからぶどう樹を植えるので、景観も良くなるでしょう。

長野とワインでつながる「人」に届けたい

今、日本各地で個人の小規模なワイナリーが増えてきています。ワイナリー勤務ののち独立する方、ワインとは関係のない仕事から脱サラなどで就農し、ぶどうを植え、「いずれはワイナリーを!」と夢を持っている方など、たくさんいらっしゃいます。

そして、まだ漠然と「ワイン造ってみたい!」と思っている方も多いのではないでしょうか。その方々に、どうすればワイナリーをつくれるか、その指針のひとつになれるように。そういう方じゃなくても「あー、ワインってなんか面白そう!」「長野県ってすてきなところ!」など楽しんでいただけるよう。

そして自分の足跡を残せるような、そんな連載にしていけたらと思っています。不定期アップですが、楽しんでいただけたらうれしいです!

著者

成澤篤人 

シニアソムリエ
1976年長野県坂城町出身。イタリアンレストラン「オステリア・ガット」ほか長野市内で3店舗を経営。NAGANO WINEを普及するための団体「NAGANO WINE応援団運営委員会」代表。故郷・坂城町にワイナリーをつくるため、2015年春からアルカンヴィーニュ内に設置された日本初の民間ワインアカデミー「千曲川ワインアカデミー」で第1期生として学びます。

日本ワイン農業研究所
アルカンヴィーニュ (ARC-EN-VIGNE)

「ARC」は「アーチ(弧)」を意味し、人と人をワインで繋ぐという寓意を込めています。フランス語で虹のことを「アルカンシエルARC-EN-CIEL」(空にかかるアーチ)といいますが、その「空CIEL」を「ブドウVIGNE」に代えて、名づけられました。ブドウ栽培とワイン醸造に関する情報を集積する、地域のワイン農業を支えるワイナリーとして、また、気軽に試飲や見学ができ、ワインとワインづくりについて楽しく学び、語り合うことができる拠点です。

http://jw-arc.co.jp

2015年05月07日掲載