三谷龍二さん|木工デザイナー

三谷龍二さん|木工デザイナー

松本市中心部からクルマで10数分。りんご畑と雑木林が広がる丘の中腹に工房を構えているのは、木の器づくりに長年取り組んでいる木工デザイナーの三谷龍二さんです。

テーブルを囲んで楽しむ食事とワイン
幸せな生活の情景に器づくりでかかわれるのがうれしい

暮らしの実感に根差した作品づくりをする三谷さんは、生活の楽しみ上手でもあります。手製の料理に合わせてお酒をチョイスするのもその一つ。この日もドライトマトとバジルをささっとブルスケッタに、そして赤ワインを薪ストーブで温めます。

「ワインは実に種類が豊富。そこが食文化として素晴らしい。いろんなワインを飲めば、あちこち旅をしている気分にもなる。信州にはおいしいワインや日本酒が多く、地産〝地消〟に積極的に貢献しています(笑)」

仕事の手を休めて昔ながらの風景が残る工房周辺を歩いたり、野外でランチを楽しむ日もあるそうですが、そんな中から生まれたのがピクニックセットです。

木には野外のイメージがあると考えて、フォークとスプーン、パン皿、グラスはすべて木製。確かにこんなセットとワインを持参すれば、いっそう気分の弾むピクニックとなるに違いありません。

工房の窓から見えるのは、四方に枝を伸ばすりんごの木を前景に、稜線が連なるはるかな山並み。松本に住まいと仕事場を構えて30年余り。生活の中での使い勝手と美しさを追い求める三谷さんの仕事を、信州の自然と穏やかな空気がそっと支えています。

最後に仕事のやり甲斐をひと言。「食事をしたり、ワインを飲んだりしながら家族や仲間と囲む食卓は、幸せな生活の姿。そこで私の器が使われるとしたらうれしいですね」

寒い季節は、薪ストーブの上で温めてホットワインに。木に漆を施したカップは液体も入れられるし、手に熱が伝わりにくく使いやすい
暮らしに根付いた器づくりの原点、バターケース。シンプルで実用的だが温かみのあるデザイン
木工の工房。明るく整然とした空間自体が作品のよう
2カ所ある工房の一つ、漆工房で梅皿を制作中の三谷さん
三谷 龍二
みたに りゅうじ

1952年福井市生まれ。1981年、松本市に工房ペルソナスタジオ開設。ふだんづかいの木の器づくりで木工の世界を広げる。全国で個展を多数開催。「クラフトフェアまつもと」「工芸の五月」(松本市)の発足当初から運営に携わり、工芸と暮らしを結び付ける活動も続けている。2011年に作品の常設展示と他の作家との個展などを開催するギャラリースペース「10センチ」をオープン。2013年、瀬戸内生活工芸祭(高松市)総合ディレクション。主な著書:『木の匙』『僕の生活散歩』(新潮社)『三谷龍二の10センチ』(PHP研究所)など

10センチ

住所|長野県松本市大手2-4-37

電話|0263-88-6210

http://www.mitaniryuji.com

2013年04月01日掲載