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ワインのつくり手を訪ねて

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高山村vol.33 たかやまワイン農園涌井 一秋/佐藤 和之

高山村のテロワールをワインとともに届けたい

広大なぶどう畑を拓き、
ワイナリー建設を目指す

NAGANO WINEにくわしい人の口から、これから期待の産地として高山村の名を聞くことが多くなりました。ワインぶどう栽培の適地であり、村を挙げて「世界に認められるワイン産地に」と取り組んでいます。

涌井一秋さんと佐藤和之さんは、ともに10年前からワインぶどうを栽培。高校の同窓生であり、2006年に「高山村ワインぶどう研究会」(会長涌井さん)を立ち上げて、志を同じくする人を巻き込んできました。大手メーカーの要求に応えてぶどうの品質を上げ、出荷組合を作って直接取引。シャルドネを中心としたぶどうは、大手メーカーの高品質ワインに採用され、ワインコンクールに入賞するようになりました。

しかし、細切れの農地では産地化に限界があります。2人は5年がかりで陳情して県営ほ場を誘致。昨年11月からほ場整備が始まり、今年2015年中に約7ヘクタールものひと続きのほ場が拓かれます。これを機に2人で立ち上げたのが「たかやまワイン農園」です。

新たにほ場整備されているのは、標高680メートルの黒部地区。重機で大きな石を除き、場所によっては土を入れ替え、準備の整ったところから、シャルドネやピノ・ノワールの苗木を植えていきます。地形的に風が東西に吹き、水はけも東西に流れます。それに沿ってぶどうの棚を東西に張り、風が抜けることで病害虫の防除を狙っています。

このほ場整備は高齢化に悩む約50人の地権者にとっても朗報であり、これからは「たかやまワイン農園」としての雇用も生まれます。村では、醸造技術者を職員として新たに採用しており、2人は「来年にはワイナリーを立ち上げたい」と意気盛んです。

これに先がけて、2人は標高500~540メートルにあるそれぞれの畑で栽培するぶどうを合わせて「和らぎ シャルドネ シュールリー 2013」をリリース。安曇野ワイナリーに委託醸造しました。その名の通り、やわらかな飲み口で、どんな料理にも合うと好評です。

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新たに整備された黒部地区のほ場。標高680mの砂れき質の土壌。北信五岳と北アルプスを望む絶景の地でもある

新たに整備された黒部地区のほ場。標高680mの砂れき質の土壌。北信五岳と北アルプスを望む絶景の地でもある

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(上の横長の写真)左からサンクゼールの「サンジョベーゼ」、サントリージャパンプレミアムの「信州シャルドネ」「高山村シャルドネ」、たかやまワイン農園の「和らぎ」、涌井ヴィンヤードの「Bisyuka」「乙女のしずく」

(上の横長の写真)左からサンクゼールの「サンジョベーゼ」、サントリージャパンプレミアムの「信州シャルドネ」「高山村シャルドネ」、たかやまワイン農園の「和らぎ」、涌井ヴィンヤードの「Bisyuka」「乙女のしずく」

10年前にシャルドネの苗木を植えた涌井さんのほ場。成熟したシャルドネの評価は高い

10年前にシャルドネの苗木を植えた涌井さんのほ場。成熟したシャルドネの評価は高い

若い人が活躍できるように
お年寄りが生きがいを持てるように

高山村には、ワインぶどう栽培を志す若者が集まり始めました。

「京都から毎月通ってくる若者もいます。やみくもに飛び込むのではなく、いいところも悪いところも見てから決断してほしい。とりあえず1年間通いでやるように勧めたんです」

そう言う涌井さんは「村には、栽培を広げる余地がまだまだある」として、「ワイン用ぶどうの栽培は、1ヘクタールの畑があれば何とか1人が食っていけて、2ヘクタールあれば家族の生活も成り立つ。まずはそこを目指して頑張れと若い人たちを励ましています」

じつは涌井さんはワインぶどうを作り始めて3年目の44歳で脱サラ。初めて収穫できたときに、45アールの畑でぶどうを栽培しても、とても生活できないことがわかったのだそうです。がく然として、佐藤さんには「会社勤めをやめないで、できるだけ長く兼業で」と諭しました。こうした経験から、新たにぶどう作りを始める人が生計を立てていく道筋が見えてきました。

「自分たちが礎になって、これからは人を育てたい。やる気と将来性のある若い人に入ってきてもらいたい。法人化によって受け入れ体制がしっかりします」(佐藤さん)

一方で、ワイン用ぶどうは他の果樹と違ってハシゴも脚立も使わないで作業できるので、小規模なら高齢者にも向くといいます。「ぶどうは手を掛けただけ応えてくれるから、村のお年寄りにとって、生きがいと小遣いになる」(涌井さん)

『高山村のおごっつぉ』を
村内外の人々に

30人で始まったワイン研究会は今や90人を越え、県外からの参加者が3割と高山村ファンが増えています。

生産・醸造・振興の3つの部会があり、どれかに属して活動します。長野や東京でもイベントを行っていますが、村内の公民館でワインの出前講座を開催。さらに村内の女性限定でワイン応援団を作ろうとしています。「ワイン産地として村の中から盛り上げたいようと思います」(佐藤さん)

「ワインは資源のひとつ。村はりんごや生食用ぶどうの産地ですし、温泉、渓谷、牧場、桜の名木などがあって、豊かな自然に恵まれています。ワインがきっかけで高山村を訪れ、景色や空気感も含めて『高山村のおごっつぉ』を感じてもらいたい」(涌井さん)

今、二人はその核となるワイナリー建設を目指して奮闘中です。

 

(取材・文/平尾朋子  写真/平松マキ)

 

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「同じように栽培しているようでも、人によって違ってくるのがぶどうづくりの面白さ」(佐藤さん)

「同じように栽培しているようでも、人によって違ってくるのがぶどうづくりの面白さ」(佐藤さん)

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涌井 一秋(わくい かずあき)

1961年長野県上高井郡高山村出身。会社勤めのかたわら先代から受け継いだ農園でりんごやプラムを栽培。「自分で育てたぶどうで作ったワインを飲みたい」と2005年にシャルドネなどワイン専用品種の栽培を始める。2006年に、佐藤和之さんとともに高山村ワインぶどう研究会を立ち上げ、会長に就任。2007年に44歳で脱サラして農業に専念。2014年9月たかやまワイン農園設立、代表取締役を務める。

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佐藤 和之(さとう かずゆき)

1961年長野県須坂市出身。会社勤めのかたわら、先代から受け継いだ農園で生食用ぶどうを栽培。高山村に所有する農地では「作物の出来が違う」ことを実感し、2005年にシャルドネなどワイン専用品種の栽培を高山村で開始。2006年に高校の同窓生・涌井一秋さんとともに高山村ワインぶどう研究会を立ち上げ、振興部会長に就任。2013年、52歳で脱サラして農業に専念。2014年9月たかやまワイン農園設立。新品種導入に向けて試験栽培を行う。

株式会社たかやまワイン農園

所在地 長野県上高井郡高山村中山駒場138
TEL 
URL https://www.facebook.com/vill.takayama.winebudoukenkyukai

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