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ワインのつくり手を訪ねて

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高山村vol.24 Cantina Riezo(カンティーナリエゾー)湯本 康之

栽培から醸造まですべてを家族で行うワイン農家

高山村に待望のワイナリー誕生

冷涼な気候や西傾斜による長い日照時間、砂礫で水はけの良い土壌など、自然条件に恵まれ、良質なワイン用ぶどうが収穫できる高山村。国内外の名だたるコンクールで、高い評価を受けている数多くのワインに原料として使われています。

2011年にワイン特区(酒造製造免許に係わる最低製造数量基準が6000ℓから2000ℓへ緩和される制度)を取得。
長野県下では、東御市についで2番目の認定を受け、一刻も早いワイナリー開設が望まれていました。
そして特区取得から4年、当時、政府が前年に環境設備したばかりの、クラウドファンドという仕組みを利用して、高山村にはじめて誕生したワイナリーがCantina Riezo(カンティーナ・リエゾー)です。

クラウドファンドとは、インターネットを通して提案者のアイデアや事業に共感する人から資金を集める支援の輪のことですが、寄付型、投資型、融資型、購入型といろいろな資金の集め方があり、カンティーナリエゾーのクラウドファンドは、一口5万円を支援すると、後で1万2千円相当のワインが送られてくる、という寄付に近い購入型のものでした。
オーナーの湯本康之さんは、目標額800万円、一口5万円の160口を、半年かけて集めようと考えていましたが、わずか1週間足らずで目標を超える金額が集まったということですから、期待の高さが伺えます。

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左から、国産では珍しいバルベーラ100%のロゼ、シャルドネ、メルロ。雪上に3つ並べると、屈折した光の反射も美しい。
ふるさと納税の返礼品にもなっている。

左から、国産では珍しいバルベーラ100%のロゼ、シャルドネ、メルロ。雪上に3つ並べると、屈折した光の反射も美しい。 ふるさと納税の返礼品にもなっている。

20坪のワイナリーはシンプルなひと箱のつくり。ひとりで動き回るのにちょうどよい大きさ。
限界まで、手間暇をかけて大切に醸造する。

20坪のワイナリーはシンプルなひと箱のつくり。ひとりで動き回るのにちょうどよい大きさ。 限界まで、手間暇をかけて大切に醸造する。

「自分がヨーロッパでみてきたワイン農家のような、家族で経営する小規模ワイナリーをやりたいんです」と、湯本さん。

「自分がヨーロッパでみてきたワイン農家のような、家族で経営する小規模ワイナリーをやりたいんです」と、湯本さん。

ワイナリーへの道のり

新潟県生まれの湯本さんが高山村に移住したのは2000年のこと。田舎で暮らしたいと思っていた湯本さんは、両親が親戚の家と畑を継ぐため移り住んでいた高山村へやってきました。サンクゼールの前身「斑尾高原農場」に入社。ジャム製造に携わっていましたが、当時の工場長だった池田健二郎さんに誘われ、27歳でワインの道に。
5年半後、ワインづくりの技術をひととおり身につけると、自分のワインをつくるため、退社。職場で知り合った奥さまを伴いイタリアへ半年間の修業旅行にでかけます。

イタリアのトスカーナ州や、ヴェネト州を周り、コンピューター制御の最新醸造技術を取り入れたワイナリーから、手作業中心の家族で経営する小規模ワイナリーまで経験。腕を見込まれ、『明日出かけるから、これやっといて』という風にいろいろ任せてもらえたこともあったそう。

帰国するとタイミングよく、自宅の畑と隣接するりんご畑を借りることができました。りんごの木を抜き、土壌改良。1枚の広い畑になりました。
2007年、すでに高山村で定評のあったシャルドネとメルロを植栽。2009年からは、日本ではまだ珍しい、バルベーラというイタリアで多く栽培されている品種も植栽します。毎年植栽を重ね、栽培面積は70aに拡大しました。

2011年3月、サンクゼールに委託醸造したワインの販売をはじめると、変化球勝負の個性的でクオリティの高いワインが全国のワインファンの目にとまることに。

「委託醸造だとワンアイテム一樽分ずつくらいしか造れない。せっかくつくったぶどうは自分で醸造したい」と、ワイナリー建設を目指していたところに、高山村がワイン特区を取得。あとは資金面をクリアしなければと、地元銀行が主催するセミナーに参加。そこで出会ったのがクラウドファンディングだったのです。
「目に見えない場所でも応援してくれる人が大勢いたのはうれしかったですね」と、湯本さんは振り返ります。
新築したワイナリーは素材にこだわり、断熱材は羊毛、屋根は本瓦。焼き杉の壁が蔵を連想させる、和を感じさせる建物となりました。

自然環境にあわせたワイン造り
ここでしか出せない味わいを追求

ワイナリーのなかに置かれているのは、シンプルでクラッシックなステンレススタンク、オーク樽やアカシア樽、木製のバスケットプレス。「めんどくさいことをしていると思われるかもしれないが、自分の手でやりたいので」と、自動制御の装置はありません。

たとえば、白ワインの場合、低温でゆっくり醸造させる方法がありますが、そのためにジャケットタンクとよばれる2層になったタンクを使ってまわりに冷水や温水をまわし、自動で温度管理をするそう。「その方法だと、どこで醸造しても同じになってしまう気がします」と、語る湯本さんは、自然環境にあわせた醸造をすることで、その土地やワイナリーでしかだせない味わいのワインができると考えています。
とはいえ、高山村はとても寒い地域なので、どうしても発酵のスタートや勢いが遅くなります。
「800ℓ〜1000ℓのタンクで発酵させると25度くらいの温度を保ち、アルコール発酵が終わるまで冷めたり、熱くなったりすることはない」など、今までの経験に基づいた知識と技術力でカバーします。

また、アルコール発酵が終わった後、液温が25度以上ないと乳酸発酵ははじまりません。一度眠った乳酸菌が雪が溶けた春先から初夏にかけて動き出すのも高山村の特徴を表し、土地にあった醸造方法なのではないかと考え、時間をかけて丁寧に造っています。
Cantina Riezo(カンティーナ・リエゾー)という名前は大切なパートナーである奥さまの「理絵(りえ)」という名前から名づけました。

可愛いラベルのモチーフは、3人息子の桜くん、胡人(こと)くん、柑太くん。
さらにワイナリーの扉の取手に桜材や胡桃(くるみ)材が使われたり、柑橘を思わせるオレンジや黄色のガラスが埋め込まれたりと、そこかしこに湯本さんの家族に対する愛情が感じられます。

「家族で力を合わせて物を生み出し、それを対価に生活するって、すごくいいと思うんです」

家の前に広がるぶどう畑に駆け出す三人の男の子。
眺めが良く、善光寺平まで見渡せ、天気の良い日は遠くに北アルプスも。誰もが憧れる、映画のワンシーンのような美しい農村風景がそこにはあります。

(取材・文/坂田雅美  撮影/阿部宣彦・平松マキ)

剪定のお手伝い。
3兄弟が頼もしい相棒になるのも、もうすぐ。

剪定のお手伝い。 3兄弟が頼もしい相棒になるのも、もうすぐ。

樽には子どもたちの可愛らしい絵。ワイヤーの張られた垣根仕立てのぶどう畑も描かれている。

樽には子どもたちの可愛らしい絵。ワイヤーの張られた垣根仕立てのぶどう畑も描かれている。

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湯本 康之(ゆもと やすゆき)

新潟県妙高市出身。都会に憧れ上京。飲食業を経て、27歳のときに両親が住む高山村に転居、ワインメーカーに5年半勤める。退社後、イタリアへワインづくりの武者修業に。2007年、標高620mの自社農園でぶどう栽培をはじめ、2011年よりCantina Riezo 公式ホームページにて委託醸造のワイン販売を開始する。2015年、ワイナリー開設。両親、妻、息子と7人暮らし。

Cantina Riezo (カンティーナリエゾー)

所在地 〒382-0800長野県上高井郡高山村高井4217
TEL info@cantinariezo.jp
URL http://www.cantinariezo.jp/index.html

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