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ワインのつくり手を訪ねて

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塩尻市Vol.17 サントリー塩尻ワイナリー清野 久一/今井 孝啓

日本ワインの先駆け、そして桔梗ケ原での新たなワインづくり

赤玉ポートワインの
原料供給基地として設立

サントリーの洋酒事業の礎ともなった「赤玉ポートワイン」は、創業者である鳥井信治郎氏により開発され、1907(明治40)年に発売されます。ほんのり甘くて誰でも飲みやすく、さらに大胆な新聞広告や、独自の景品やノベルティの開発、そして国内初のヌードポスターの採用など、斬新な販売促進策もあって人気に火がつき、爆発的に売り上げを伸ばします。

赤玉ポートワインの原料確保のため、1936(昭和11)年に、山梨県に日本最大の自家ぶどう園、山梨ワイナリー(現在の登美の丘ワイナリー)が設立。同年、塩尻では、生食用ぶどうの新たな販路を模索していた林五一氏、塚原武雄氏らの尽力によって工場が誘致され、現在の塩尻ワイナリーが設立されました。

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2013年、ワイナリーが建て替えられて醸造設備が刷新した。「小規模タンクで畑ごとの小さな仕込みができるようになりました。土地の特性を生かして、新たな表現力を求めていきます」と清野さん

2013年、ワイナリーが建て替えられて醸造設備が刷新した。「小規模タンクで畑ごとの小さな仕込みができるようになりました。土地の特性を生かして、新たな表現力を求めていきます」と清野さん

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ワイナリーが創設された昭和11年当時のままの樽貯蔵庫。空調設備なしでも15℃から20℃に保たれ、夏は涼しく、冬は暖かい

ワイナリーが創設された昭和11年当時のままの樽貯蔵庫。空調設備なしでも15℃から20℃に保たれ、夏は涼しく、冬は暖かい

2013年、新工場完成
小ロットでより高品質に

2002(平成14)年に長野県原産地呼称管理制度が設けられ、それに合わせて04年には塩尻ワイナリーでビン詰めができる体制が整えられます。その年の国産ワインコンクールでは、塩尻ワイナリー特別醸造「桔梗が原メルロ2002」が銅賞を受賞。翌05年には「塩尻メルロ2003」が銀賞を、「塩尻シャルドネ2003」が銅賞を受賞して、塩尻ワイナリーの存在を世に知らしめます。

2013年にはワイナリーの建て替えが行われ、醸造設備が刷新されました。最新式の選果台が導入され、ぶどう果粒が厳選できるようになりました。それまで据えられていた10〜20キロリットルの醸造用タンクは、3〜5キロリットルの小型タンクに置きかえられました。

「これまでは、どうしてもまとめて仕込まなければならなかった。今ある『岩垂原メルロ』は、塩尻メルロの中でも一番いい畑から醸造したワインです。小ロットで畑ごとの仕込みができるようになって、そういう新たな銘柄が生まれる可能性があります」と言うのは、醸造長の清野久一さんです。サントリーのジャパンプレミアム産地シリーズは、それぞれの産地の最適品種からつくられる最高品質のワインですが、「岩垂原メルロ」はそのひとつです。

「メルロのほか、マスカット・ベーリーA、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン。手がける品種は今のところ変わらないけれど、テロワールの違いがわかるようなワインづくりがこれからできると思います」と清野さんは言います。

最新設備が整う一方で、敷地内にはワイナリー創設当時のままの建物がいくつか残ります。樽貯蔵庫は、外は木造、中はコンクリート造り。半地下構造で、夏でも20℃、冬は10℃前後に室温が保たれています。普段は非公開ですが、塩尻ワイナリーフェスタ開催期間中は、応募者を対象にガイドツアーつきで開放されています。

桔梗ケ原らしさを追い求め
この地のワインをさらに広めたい

サントリーで新たに自社管理することになった桔梗ケ原の畑へ案内してもらいました。案内してくれたのは、栽培を担当する今井孝啓さんです。スマート方式で仕立てられたメルロの畑は、驚くほど整然としています。

「ここは、もともとかなりいいメルロをつくられる生産者の方の畑だったので、会社としても手放したくなかった。きれいに仕立ててあるので、管理もしやすいし、品質も安定しています。できればここのぶどうで、単独のワインができればと思っています」と今井さんは言います。

今井さんは登美の丘ワイナリーで10数年間、栽培管理や技術開発、ぶどうの仕入れなどを担当し、2012年に塩尻ワイナリーへ配属されました。今では栽培だけでなく、醸造にも携わります。

「畑を引き継いで、設備も整って、自分がちょうどこっちに来たタイミングといろいろとそろいました。自分で栽培して、それがワインになるというのは、2013年がはじめてなんです」。仕込まれたワインは樽熟成に入り、3年後、どんなワインになっているのか。楽しみでならないと今井さんは言います。

「今は畑に軸足を置いて、将来的には醸造と両方しっかりできるようにならないと。いいぶどうをつくって、いいワインにして、お客さんにおいしいと言っていただけるところを目指します」

清野さんも、目指すところは「飲んだ人が豊かな時間を過ごせるワイン」だと言います。「塩尻ワイナリーでビン詰めするようになって9年ですが、ようやくここまでの製品がつくれるレベルにまで上がってきました。企業としてだけでなく、地域のメーカーさんと共存共栄しながら、この地のワインをもっと広めていきたいです」

 

(取材・文/塚田結子  写真/平松マキ)

 

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新たに自社管理をはじめた畑にて「できればこの畑で単独のワインをつくりたい」と今井さん。「岩垂原メルロ」に続く「桔梗ケ原メルロ」という名のワインが生まれることを心待ちにしたい

新たに自社管理をはじめた畑にて「できればこの畑で単独のワインをつくりたい」と今井さん。「岩垂原メルロ」に続く「桔梗ケ原メルロ」という名のワインが生まれることを心待ちにしたい

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清野 久一(せいの きゅういち)

1962(昭和37)年生まれ、山形県出身。地元で食品加工の仕事に携わった後、29歳でサントリーに転職。ここでワインづくりのすべてを身につける。2001年に塩尻ワイナリーに異動。現在は醸造長を務める。

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今井 孝啓(いまい たかひろ)

1976(昭和51)年生まれ、山梨県出身。山梨県立農業大学校で果樹について学び、卒業後1999年にサントリー入社。登美の丘ワイナリーに配属され、栽培管理や技術開発、ぶどうの仕入れなどを担当。2012年に塩尻ワイナリーに配属。栽培に加え、醸造にも携わる。

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サントリー塩尻ワイナリー

所在地 長野県塩尻市大門543
TEL 0263-52-0144

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ステンレスタンクと樽、どちらを使って熟成させるのか。
また、樽を使うのであれば新樽と古樽、どちらにするのか。
選択肢がたくさんある。

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