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ワインのつくり手を訪ねて

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長野市Vol.16 西飯田酒造店飯田 基

日本酒の蔵元がつくる花酵母で醸したワイン

江戸末期から続く造り酒屋の
一升瓶ワイン

西飯田酒造店は、江戸末期創業という歴史ある造り酒屋です。壁を接してすぐ東隣には東飯田酒造店がありますが、ふたつは同姓ながら血縁関係はないとのこと。「親類筋も違うし、さかのぼっても違うみたいです。創業は同じくらいだと思うけど、生きてなかったからわからない」と笑うのは、8代目となる飯田基さんです。

酒蔵を横切るようにして流れる用水路は、すぐそばを流れる犀川から引き込まれています。この犀川の伏流水を汲み上げて仕込まれるのが「信濃光」や「積善(せきぜん)」といった銘酒ですが、ここでは飯田さんの手によりワインもつくられているのです。

自社畑のナイアガラからつくられる白ワインは、果実をそのまま頬張ったようなフレッシュ感が飲みやすいと評判で、また日本酒の蔵元がつくるワインとして珍しがられ、わざわざ蔵元へ買いに訪れる人もいるとか。

日本酒の仕込みがはじまる前(近年はどんどん早まって、10月には仕込みがはじまるそうです)、9月にぶどうを収穫してすぐに破砕機へ。日本酒と同じタンクを使って発酵させ、年明け間もなく一升瓶に詰められて店頭に並びます。「日本酒とワインは同じ醸造酒だし、共通点も多いですね。酵母添加したり、温度調整をしたり」

共通点といえば、日本酒とワインどちらにも用いるのが花酵母。西飯田酒造店の「積善」といえば、花酵母で仕込まれた酒として左党には知られるところなのです。「息子が帰ってきて『ワインも花酵母でやってみよう』と言い出しましてね」

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ワインの仕込みは9月から、11月には日本酒の仕込みがはじまる。

ワインの仕込みは9月から、11月には日本酒の仕込みがはじまる。

1985年生まれの若き杜氏、一基(かつもと)さん。蔵元の改革に取り組みつつ、歴史ある酒造りを一身に担う。

1985年生まれの若き杜氏、一基(かつもと)さん。蔵元の改革に取り組みつつ、歴史ある酒造りを一身に担う。

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花酵母を用いた酒造り
低コスト、高品質な地元の酒

さて「花酵母」とは。花の持つ糖分に引き寄せられる自然界の酵母から、良い酒を醸す酵母菌のみを取り出したもの。日本酒だけでなく、焼酎やワインにも用いられます。長い年月にわたる地道な研究のうえ、花酵母の分離培養を成功させたのは、東京農業大学短期大学部醸造学科の教授を務める中田久保氏です。

飯田さんは中田教授とは農大時代の同級生。飯田さんの長男である一基さんは中田教授のもとで学び、大学卒業後は花酵母の酒造りで知られる茨城県の来福酒造で3年間の修業を積みました。そして2010年の帰郷後、若き杜氏として酒造りに取り組んでいます。

「自分が帰ってくるまではワインも日本酒の酵母でやっていたんですが、ワインなのに日本酒っぽいクセを感じて。教授に白ワインと組み合わせて面白いのはどの酵母かを相談して『日々草』がいいだろうと」

「日々草」で醸した日本酒は「しっかりした味わいがありながらスベリが良く、飲み飽きしないタイプ」。それを白ワインに応用させたのです。ちなみに「積善」に用いるのはツルバラ、ひまわり、月下美人、ベゴニア、アベリアの5種で、色違いのラベルが貼られます。

ほかにも東京農大で生まれた花酵母にはナデシコ、シャクナゲ、コスモスなど多数あり、「吟醸系のフルーティーな香りとしっかりした味わい」「リンゴや洋梨を思わせる香り」「飲んだ後にキレを感じさせる」など、それぞれに酒の香りや味の個性を引き出します。

中田教授は「より良い地酒造りは、その土地の農業を大事にしてこそ。地酒として原点に返り、地元と花を結びつけて、地元に愛される日本酒であれ」と唱えています。それはワインにも通じることといえるでしょう。

リンゴのワインがはじまり
シナノゴールドのワインも誕生

ワインづくりは40年ほど前に飯田さんの父親がはじめたといいます。「最初はリンゴのワインをやったんです。このあたりは共和といってリンゴの産地だもんで。霜がきて凍みちゃったリンゴをワインにしてくれないかって頼まれて始めたそうです。ぶどうを植えたのも親父。リンゴもぶどうも一緒だって、間の手にやってみようかなとはじめたんじゃないですか」

酒米となる美山錦の田んぼと隣り合い、一反歩ほどあるぶどう畑は、現在は飯田さんの弟である誠治さんが手入れをしています。「全農にいたもんでね、仲間のしょうがいろいろ教えてくれて。山辺にも全農時代の仲間がいるんですよ。だから教わり行ったりさ。きちんと管理し出したのは還暦になって、定年退職してっからです」と誠治さんは言います。

「親父は最初リースリングを植えたんですけど、一般受けするにはナイアガラの方がいいんじゃないかって植え替えたんです」。ナイアガラはすでに樹齢15年ほど。棚づくりの畑で「ちょっと成りすぎかもしれない」と誠治さんが言うほど見事な果房がたわわに実ります。

2013年の夏、地元の農協と共同開発してきたシナノゴールドを使ったワインが仕上がりました。シナノゴールドは長野県果樹試験場で生まれた黄金色のリンゴですが、でき上がるワインもまた黄金色に輝きます。その味は「いくらか辛めだったかな」とのこと。2013年の秋に収穫したリンゴは、リンゴから抽出した花酵母で仕込んだそうです。

リンゴからはじまったワインづくりが再び原点に返ったかのようですが、実は飯田さんには再びつくりたいワインがもうひとつ。「ゆくゆくはリースリングやろうと思ってさ。もう一回復活させて。あの香りがいいんだよな」。飯田さんは顔をほころばせました。

 

(取材・文/塚田結子  写真/平松マキ)

栽培担当の誠治さん。酒米づくりをしながら、ぶどう畑の手入れをしている。1反歩弱の畑に植わる5本のナイアガラが「信州の地ワイン メローズ」となる。

栽培担当の誠治さん。酒米づくりをしながら、ぶどう畑の手入れをしている。1反歩弱の畑に植わる5本のナイアガラが「信州の地ワイン メローズ」となる。

2014シーズンから新たなエチケット(ラベル)に随時更新しています。

2014シーズンから新たなエチケット(ラベル)に随時更新しています。

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飯田 基(いいだ もとい)

1948(昭和23)年、長野市生まれ。江戸末期より営む造り酒屋の8代目として代表を務める。

西飯田酒造店
西飯田酒造店

所在地 長野県長野市篠ノ井小松原1726
TEL 026-292-2047

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