ワインのつくり手を訪ねて

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塩尻市Vol.8 アルプス矢ケ崎 学

進化を遂げながら歴史を重ねる実力派ワイナリー

ぶどうとワインの品質管理と
設備の衛生管理を徹底する

株式会社アルプスは1927(昭和2)年に「アルプス葡萄酒醸造所」として創業しました。大型の最新設備が整う本社工場は、どこまでも清潔で整然としています。「衛生管理については、昭和30年代からすでに力を入れています」と言うのは、代表取締役社長の矢ケ崎学さん。現在では、FSSC22000(※別掲)の認定を受けています。

「せっかく良い原料が入っても醸造設備や衛生管理が悪かったり、技術的な面で不備があると最終製品の品質が落ちますので、そこには注力しています。口に入るもの、身体に入るものですから、一番大切な部分ですよね」

同様に配慮するのが、ぶどうとワインの品質管理です。約400軒の地元栽培農家と「アルプス出荷組合」を結成し、そこからぶどうを仕入れていますが「常に情報交換をしてコミュニケーションをとり、安全で品質の良いぶどうをつくっていただいています」

入荷してくるぶどうについては農家に農薬使用量の提出を求め、栽培方法を確認し、重金属や放射線などの機器分析をし、不備のないものを受け入れます。さらにできあがったワインについては、化学的分析などさまざまな製品検査を行い、官能検査をして合格したものだけを出荷しています。

一つ、ひとつの選択によってワインの味が変わる。
その都度確かめ、自分の求めるワインに近づけるようにする。

一つ、ひとつの選択によってワインの味が変わる。 その都度確かめ、自分の求めるワインに近づけるようにする。

目視や試飲といった官能検査を経て最終製品となる。理化学的測定とともに人間の感覚も頼りにされる          ※FSSC22000(Food Safety System Certification 22000)は、食品製造組織に向けた新しい食品安全システムの規格。従来の国際規格であるISO22000の弱い部分を補い、より強化した規格としてGFSI(Global Food Safety Initiative:世界の流通および食品会社大手約 650社が参加する組織)により開発された 

目視や試飲といった官能検査を経て最終製品となる。理化学的測定とともに人間の感覚も頼りにされる          ※FSSC22000(Food Safety System Certification 22000)は、食品製造組織に向けた新しい食品安全システムの規格。従来の国際規格であるISO22000の弱い部分を補い、より強化した規格としてGFSI(Global Food Safety Initiative:世界の流通および食品会社大手約 650社が参加する組織)により開発された 

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アルプス栽培担当

栽培責任者の百瀬正雄さん(右)は元銀行マン。宮田進さん(左)も異業種からの転身を遂げた。矢ケ崎社長とともに自社畑にて                      (上のメインカット)          醸造責任者の森健太郎さん。「ある程度酸素を与えてあげないと硫黄臭が出てくる場合がある。樽は気をつけないといけないんです」と、専用の器具で撹拌する

つくり手も楽しみながら
いかに飲み手を満足させるか

徹底した品質管理と衛生管理をクリアしたうえで、矢ケ崎社長はワインづくりをエンターテインメントに例えます。「ロックバンドと一緒です。お客さまをいかに楽しませるか。そして自分たちも楽しく仕事をする。そうでないと長続きしないですから。うちはずっと昔から、いかにお客さまを満足させるかということを大事にしてきました」

その言葉は「無添加シリーズ」や「オーガニック有機ワイン」など、豊富な商品展開にも表れています。「例えば、お客さまの中には酸化防止剤が入っていないワインが欲しいという方がいらっしゃる。そうしたニーズに応えるために、会社がどういった努力をするかということ。あくまでもお客さまに喜んでもらうのが第一です」

さらに、より良い製品づくりのため「改善提案活動」を実施しています。「各課で月6件以上の改善提案をしてもらっています。製品に関する提案でもいい、職場環境や日常業務にまつわる提案でもいい。中には素晴らしい案が出てきます。そういった活動をしていくと企業としての力が上がって、製品の品質向上にもつながります」

特に若い醸造スタッフからの提案は、なるべく受け入れていると言います。「確かに“ミュゼ・ドゥ・ヴァン”シリーズなどは、年々良くなっていくんですよね。スタッフにとってもやりがいがあるし、会社としてもいいことです」

効率化を図りつつ、手間を惜しまず
そして生まれた「ミュゼ・ドゥ・ヴァン」

アルプスの誇るブランド「ミュゼ・ドゥ・ヴァン」は評価が高く、国産ワインコンクールでの受賞歴を重ねています。矢ヶ崎社長は「安くし過ぎましたね」と笑いながら「生産量である程度のコストを抑えられる。あとはいかに効率良く生産するか」だと言います。効率化を図って価格を抑えつつ、人の手をかけるべきところでは手間を惜しまない。そうしたバランスのうえで高品質なワインがつくられています。

また、契約農家の高齢化や遊休耕作地の増加を踏まえ、2007(平成19)年に「農業法人アルプスファーム」を設立し、自社農園の拡張に取り組んでいます。休耕地を購入し、土壌改良をしながら、主にヨーロッパ系品種のぶどうを植栽しています。栽培を担当するのは4人。

「今は自社スタッフだけですが、これから畑を拡大していったら、どなたかやりたい方に完全契約でお願いして、ぶどうを栽培していただきたいと考えています」

これまで自社農園産のワインとしてシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ツヴァイゲルト・レーベを送り出し、2012年ヴィンテージのメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンも出荷の時を待ち、熟成を重ねています。

「ワインの消費量はこれから必ず増えます。いいぶどうをたくさん仕入れて、いいワインをつくる。その中でもミュゼ・ドゥ・ヴァンはうちのフラッグシップですので、ラインナップを増やして、できるだけ手に取りやすい価格帯でご提供していきたいと思っています」

 

(取材・文/塚田結子  写真/平松マキ)

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「ミュゼ・ドゥ・ヴァン」のシリーズ充実に向けて小ぶりのステンレスタンクを採用するほか、さまざまな試みが行われている

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矢ケ崎 学(やがさき まなぶ)

1963(昭和38)年、塩尻市生まれ。北海道大学理学部生物化学科卒業後、アメリカのオレゴン州立大学などへ留学。90(平成2)年に株式会社アルプス入社。現在、代表取締役社長 兼 営業本部長を務める。

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株式会社 アルプス

所在地 〒399-0712 長野県塩尻市塩尻町260
TEL 0263-52-1150

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