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ワインのつくり手を訪ねて

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小諸市Vol.65 アンワイナリー&ステイ松村清美さん

魅力あふれる城下町に誕生した、宿泊もできるワイナリー

小諸市に3軒目のワイナリー誕生

小諸市は、日本のなかでも降水量が少なく、昼夜の寒暖差がはっきりとしているため、ワイン用ぶどうの栽培に適した土地です。いち早くその可能性に気がつき、1971(昭和46)年に醸造用ぶどうの契約栽培を開始したマンズワイン小諸ワイナリーをはじめ、島崎藤村ゆかりの老舗旅館、中棚荘が母体のジオヒルズワイナリーに続いて小諸市に3軒目に誕生したワイナリーが、アンワイナリー&ステイです。

オーナーの松村清美さんは、大学生と高校生、二人の男の子のお母さんです。子育てにひと段落ついたときに、次は大好きなワインをつくりたいと、2015年に小諸市に畑を借りました。愛飲しているワインのひとつ、ソラリスシリーズを醸造するマンズワイン小諸ワイナリーがあり、この土地であれば間違いがないと思ったからです。
そして週末はヴィラデストワイナリーで栽培のボランティアに参加。長野県ワイン生産アカデミーや広島の酒類総合研究所でも学びました。

浅間山麓、糠地(ぬかじ)地区のぶどう畑。標高が850m〜900mあり、フランス アルザス地方に似た高冷地ならではの品種がよく育つ

浅間山麓、糠地(ぬかじ)地区のぶどう畑。標高が850m〜900mあり、フランス アルザス地方に似た高冷地ならではの品種がよく育つ

9月初旬から少しずつ色づく、ヴェレゾン期のぶどう

9月初旬から少しずつ色づく、ヴェレゾン期のぶどう

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樹齢30年のりんごの木。新たにプラムリーと紅玉も植えた

樹齢30年のりんごの木。新たにプラムリーと紅玉も植えた

台風や雹害にあったりんごを買い取ってシードルにすることも。「傷んだ部分を丁寧にカットしなければいけないので大変ですが、農家さんが喜んでくださるので」と、一家総出で作業する

台風や雹害にあったりんごを買い取ってシードルにすることも。「傷んだ部分を丁寧にカットしなければいけないので大変ですが、農家さんが喜んでくださるので」と、一家総出で作業する

第二の人生に選んだワインづくり

2015年、ワイン用ぶどうを植える畑を探しているときに、りんごの木を切ろうとしている地元の人に出会います。「父が倒れ、栽培を続けられないから木を切ってしまおうと思って」と、話す地主さん。
切ってしまうのは惜しいと感じた松村さんは、りんご畑を借りることになりました。

成木だったので、その年から、たくさんのりんごが収穫でき、さっそく信州まし野ワインで委託醸造して、シードルをつくり、軽井沢の農産物直売所、「発地市庭(ほっちいちば)」などで販売を開始しました。
「ワインを作ろうと思っていましたが、たまたまシードルが先になりました。でも、どんどん前へ進むことができたので、すぐにシードルを作って販売することができたのはよかったですね」と松村さんは振り返ります。

2年間続けて委託醸造でシードルをつくっていましたが、委託先のスケジュールにあわせて収穫するのではなく、りんごにとって一番良いタイミングで収穫して自分の飲みたいワインやシードルをつくりたいと、ワインづくりへの思いを新たにします。そして2018年冬、築50年以上の古民家を改装して、アンワイナリー&ステイを開業しました。

同時期に借りることができた、りんご畑と隣接する畑や小諸市糠地(ぬかじ)地区の畑には、ピノ・ノワールと、ピノ・ムニエ、シャルドネを植えました。少しずつ収量が増えてきたので、ブラン・ド・ブラン(白ぶどうのスパークリング)や、ブラン・ド・ノワール(赤ぶどうのスパークリング)にも挑戦したいそう。
「泡のお酒が好きなんです。お祝いの席でも飲んでいただけるようなワインづくりを目指しますが、自宅で気軽に飲めるシードルもつくりたい。どんなシーンでも楽しんでいただけるよう、ラインナップを揃えてきたいですね」

駅や観光名所が徒歩圏内
観光の拠点にも便利なワイナリー兼宿泊施設

ワイナリーの2階は素泊まりの宿泊施設になっています。襖で仕切られた純和風の2部屋があり、2〜3名の2グループや、襖を開け放して1部屋にすると最大5名まで宿泊できます。
ラウンジでグラスワインを1杯300円から楽しむことができるほか、ボトルで買って部屋で楽しむことも。おつまみの持ち込みも自由です。

小諸駅からも近く、観光名所の小諸城址懐古園までは徒歩8分。城下町より低い位置に築かれた、全国的にめずらしい「穴城」で、400年前の大手門や、野面石積みの石垣が当時の姿で残っているので、お城好きのマニアにとても人気があります。美術館や動物園、遊園地も併設されて、家族連れで訪れても楽しめます。

世界192カ国、33,000の都市で80万以上の宿が登録されているウェブサイトAirbnb(エアビーアンドビー)に登録していることもあり、海外からの来訪者も多く、アジア圏や、イギリス、オーストリアなどヨーロッパからも訪れます。台湾からお城好きの女性がひとりでやってきて宿泊したこともあったそう。
冬にはこたつがとても喜ばれ、「ラブリーハウスって言われましたよ。外国の方はこたつがかわいく見えるのね」と楽しそうに笑う松村さん。

旅行ガイドブックの『ことりっぷ』から取材を受けたことがきっかけで、ことりっぷファンの若い女性たちがお店を訪れることも。
「小諸は以前に比べると寂しくなってしまったので、若い女の子たちがきてくれると華やかでいいですね。もう少し飲食店が増えたらいいなと思っているので、ワインバルもはじめました」
自分の夢を形にして、なお一歩ずつ前へ進んでいく松村さん。挑戦はまだまだ続きます。


(取材・文/坂田雅美  写真/平松マキ)
ぶどう畑とぶどうのヴェレゾン、シードルの写真は松村清美さん撮影
2020年3月16日記事掲載

1階はワイナリー。ショップも併設され、試飲したり、ボトルで購入することができる。写真はクラウドファンディングで購入したシードル用の卵型のタンク

1階はワイナリー。ショップも併設され、試飲したり、ボトルで購入することができる。写真はクラウドファンディングで購入したシードル用の卵型のタンク

2階は宿泊施設。1泊 3500円/人(税別)
(7月20日〜9月20日、12月1日〜2月末は、冷暖房費別途1000円)

2階は宿泊施設。1泊 3500円/人(税別) (7月20日〜9月20日、12月1日〜2月末は、冷暖房費別途1000円)

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松村清美さん(まつむらきよみ)

新潟県柏崎市出身。東京で就職し、サラリーマン生活を10年送った後、子育ては自然豊かな場所でと、軽井沢へ移住。子育てをしながら、別荘専門の不動産業に携わる。子育てがひと段落したため、第二の人生をワインづくりに捧げるため、2015年より小諸市でりんごやワイン用ぶどうの栽培をはじめる。長野県ワイン生産アカデミーや広島酒類総合研究所にて学び、2018年冬にアンワイナリー&ステイを開業する。

アンワイナリー&ステイ

所在地 長野県小諸市市町1-2-4
TEL 0267-22-1518(FAX兼用)
URL https://www.plusforest.com/

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