ホーム > 特集 > ワインのつくり手を訪ねて > Vol.59 VinVie(ヴァンヴィ)

ワインのつくり手を訪ねて

_DSC0848_p

松川町Vol.59 VinVie(ヴァンヴィ)竹村暢子さん、竹村隆さん、竹村 剛さん、佐藤 篤さん

アルプスを望むりんご畑から生まれるシードル

松川町、りんご農家のシードルづくり

長野県の中央アルプスと南アルプスにはさまれた松川町は、りんごの産地として名高いところです。果樹栽培の歴史は100年以上にわたりますが、近年では高齢化に伴う後継者不足と遊休農地の拡大が課題となっていました。

問題解決の一環として、りんご生産農家により組織された「南信州まつかわりんごワイン・シードル振興会」が働きかけ、松川町が「ワイン・シードル特区」の認定を受けたのが2016年3月のこと。「信州まし野ワイン」が醸造を担い、町内のりんごで作るシードルは、今では20種以上にのぼります。

竹村暢子さんは立科町の出身で、22歳のときに松川町でりんご園を営む竹村隆さんのもとに嫁いできました。夫婦共通の趣味であるバイクを楽しみつつ、男子3人の母となり、家族でりんご園を切り盛りするかたわら、振興会の一員として活動してきました。

2016年4月にドイツ・フランクフルトで開催された「国際シードルメッセ」に参加した暢子さんは、かの地でシードルがあたりまえのように飲まれていることを知り、「自分でもシードルを作りたい」と強く思うようになります。

それまで自園でもスティルタイプのりんごワインは作っていましたが、すっかりシードルに魅せられてしまったのです。そして、まし野ワインの醸造を担当していた竹村剛さんに「一緒に作ってほしい」と声をかけます。

(メイン画像)黄色いラベルはハチ酵母で作ったシードル。ハチ酵母は、もともとビールや日本酒に使われていたが、シードルに用いるのは初の試み。できあがったシードルは酸と香りが際立ち、特にアシナガバチは熟した桃のような香りがする。(上のサブカット)竹村隆さんは家業を継いでりんご農家となった。VinVieの取締役、栽培担当

(メイン画像)黄色いラベルはハチ酵母で作ったシードル。ハチ酵母は、もともとビールや日本酒に使われていたが、シードルに用いるのは初の試み。できあがったシードルは酸と香りが際立ち、特にアシナガバチは熟した桃のような香りがする。(上のサブカット)竹村隆さんは家業を継いでりんご農家となった。VinVieの取締役、栽培担当

_DSC0953_p
畑には生食用に加えて、海外のシードル専用のりんごが30種ほど植えられている。「いろいろ試せるのが自社農園の強み。農家がシードルを作る意義があります」と暢子さんは言う

畑には生食用に加えて、海外のシードル専用のりんごが30種ほど植えられている。「いろいろ試せるのが自社農園の強み。農家がシードルを作る意義があります」と暢子さんは言う

互いの得意な分野を合わせて

竹村剛さんは松川町のとなり、高森町で育ち、高校卒業後は東京農業大学へ進学しました。いずれは農業をやろうと思いつつ、いったんは趣味でもあったバイクの整備士になります。そして15年が過ぎ、いよいよ農業の道へ進みます。

やるからには豊かな農業、つまり稼げる農業をやろうと心に決め、そのためには六次産業化が不可欠であり、流通までを手ずから行わなければ、という思いがありました。そこで、2013年当時「日本一小さなワイナリー」を謳っていた東御市の「はすみふぁーむ」に転職します。

栽培から醸造、ときには流通まで。望んでいたとおりワインのひととおりに携わることができました。そして1年半後に帰郷して、まし野ワインの醸造担当者になります。前任者が独立して、醸造を任せられる人をさがしていたのです。

いずれ独立することを決めていた剛さんですが、暢子さんから声をかけられて「ひとりではなく、誰かと一緒にやるのもいいなと思いました」と言います。暢子さん夫妻は栽培のプロとして良質なりんごを生産し、しかもりんご園にはすでに顧客がいる。それは大きな強みでした。

自分たちでシードルやワインを作って売っていくには「販売のプロが必要だ」とふたりは考えました。「僕らは果物を育てて、ワインをつくることまではできるけど、売ることはできない」。そして声をかけたのが、剛さんの高校の同級生である佐藤篤さんでした。

佐藤さんはその頃、東御市にある「ヴィラデストワイナリー」で営業統括マネージャーとして販売や企画に携わっていました。剛さんと親交を深め、将来について話し合うこともあったといいます。「僕ができるのは売ることくらい」と佐藤さんは謙遜しますが、それこそが起業するうえで欠かせぬ力だったのです。

2020年3月のワイナリー完成を目指して

暢子さんの夫の隆さんも加えた4人で、2018年4月、株式会社「VinVie(ヴァンヴィ)」を設立しました。フランス語でワインを意味する「vin」と、生命や人生などを意味する「vie」を合わせた造語で、「命をつなぎ、人生を潤し、生活に根ざすワイン」をあらわします。

新たにワイン用のぶどうとシードル用のりんごの栽培も開始しました。マッキントッシュ、ヴァージニアクラブ、ゴールデンラセットなど、シードル用のりんごは日本ではほとんど栽培されておらず、手探り状態とのこと。「たとえばヴァージニアクラブの果汁は甘酸っぱくて、皮には渋みがあり、単一での醸造を考えています」と剛さんは言います。

2018年秋にはシードルを初リリース。醸造は引き続き、まし野ワインで剛さんが行いました。ふじと昴林をベースに、王林とシナノゴールドで香りを加え、紅玉、グラニースミス、ピンクレディで酸味を、さらに洋梨のル・レクチェでわずかな渋みを加えました。

2019年にはマルハナバチとアシナガバチ、それぞれから抽出したハチ酵母を使ったシードルを開発。そして10月には、同じくアシナガバチの酵母で作ったロゼシードルをリリースしました。果肉の赤いりんごであるジェネバとブルーベリーも少し加えた、低アルコールのスティルタイプです。さらに洋梨のバートレットで仕込んだサイダーも発売を控えています。

11月、道路に面した畑の一角に、いよいよ醸造所が着工しました。2020年3月のオープンを目指しています。栽培、醸造、販売、それぞれが自分の役割をまっとうしつつ、互いを補い合いながら、ヴァンヴィの躍進は続きます。


(取材・文/塚田結子  写真/宮崎純一)
竹村隆さんとぶどうのヴェレゾンの写真は佐藤篤さん撮影
2019年11月14日記事掲載

ぶどうはメルロ、ソーヴィニヨン・ブラン、シラー、ピノ・ノワール、ケルナー、デラウエア、竜眼、プティ・マンサンを植え、2019年にはカベルネ・フランを定植した

ぶどうはメルロ、ソーヴィニヨン・ブラン、シラー、ピノ・ノワール、ケルナー、デラウエア、竜眼、プティ・マンサンを植え、2019年にはカベルネ・フランを定植した

_DSC0890_p
竹村暢子さん、竹村隆さん、竹村 剛さん、佐藤 篤さん(たけむらのぶこ たけむらたかし たけむらつよし さとうあつし)

代表取締役の竹村暢子さんは1972年生まれ、立科町出身。夫である竹村隆さんの営む「りんご屋たけむら」に嫁ぐ。2018年4月4日、株式会社「VinVie」設立。バイクが趣味の3児の母。

取締役で栽培・醸造担当の竹村 剛さん(写真右)は1974年ネパールのカトマンズ生まれ、高森町育ち。東京農業大学農芸化学科卒業後、バイクの整備士になる。2013年からはすみふぁーむ(東御市)、2014年から信州まし野ワイン(松川町)に勤める。2018年に「VinVie」設立。

取締役で営業・企画担当の佐藤 篤さんは1974年松川町出まれ。信州大学経済学部経済学科卒業後、IT系の企業でシステム営業になる。2015年からヴィラデストワイナリー(東御市)で販売・企画に携わり、営業統括マネージャーとなる。2018年に「VinVie」設立。

35686875_2017857548284689_1760055560423604224_n
株式会社 VinVie(ヴァンヴィ)

所在地 下伊那郡松川町大島3306-1
TEL 070-4455-2368
URL http://www.vinvie.jp

特集