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ワインのつくり手を訪ねて

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安曇野市Vol.5 安曇野ワイナリー小林 龍義/加藤 彰

安曇野の地で醸す、生産者の顔が見えるワイン

クリアに仕上げる
きれいなワイン

安曇野ワイナリーのワインは、クリアで雑味のないすっきりとした味わいが印象に残ります。特にシャルドネやナイアガラは、その特徴が顕著です。例えば「シャルドネ シュール・リー」は、ワインを酵母のオリと触れさせることで奥行きとふくよかさを増しつつ、後味はきりりとさわやか。あるいは「ナイヤガラ」は、お酒の苦手な人にも飲みやすい甘い飲み口ながら、すっきりとしたキレの良さ。

「オーナーの方針が、『常に正直であり、クリアな商品づくり』なんですよ」と言うのは、取締役総支配人を務める小林龍義さん。オーナーとは安曇野ワイナリーの社長であり、親会社の樫山工業の社長である樫山宏氏のこと。樫山工業といえばドライ真空ポンプで世界市場のトップシェアを競う会社ですが、ワインにおいても、ものづくりという共通項に結ばれたブレのない信念が貫かれています。

ワイナリー本館前に広がる畑には、正面通路をはさんでシャルドネとメルローが植わる

ワイナリー本館前に広がる畑には、正面通路をはさんでシャルドネとメルローが植わる

4月中旬。畑では、越冬した虫と病原菌を排除するため、樹皮をはぐ作業が行われていた

4月中旬。畑では、越冬した虫と病原菌を排除するため、樹皮をはぐ作業が行われていた

加藤さん
ビール醸造用のステンレスタンクを、白ワインの発酵に転用している。おそらくここでしか見られない光景

ビール醸造用のステンレスタンクを、白ワインの発酵に転用している。おそらくここでしか見られない光景

ふたりで定期的にすべての樽をテイスティングする。「僕らがコミュニケーション取れてないと、商品がぶれちゃうんで」

ふたりで定期的にすべての樽をテイスティングする。「僕らがコミュニケーション取れてないと、商品がぶれちゃうんで」

より良いワインを求め、
ぶどう栽培農家と手を携えて

そうした思い入れを現場に落とし込んでいくのが、醸造責任者である加藤彰さんです。礼儀正しく、背筋の伸びた大柄な体躯の持ち主は、元自衛官という異色の経歴の持ち主でもあります。塩尻のワイナリーで経験を積んだあと、安曇野ワイナリーの設立と同時にこちらへ移ってきました。

「塩尻では、すでにワインづくりの土台ができていたので、ワインをつくるのに困ることはなかった。ここはぶどうもないし、契約農家さんもいない。すべてがゼロからのはじまりでした」

加藤さんがそう語るのは、2008年、安曇野ワイナリーを設立した当初のこと。自社畑を開墾するとともに、より良いぶどうを栽培してくれる農家を求め、より質の高いワインをつくるための話し合いを重ねました。

大切にしたのは、つくり手の顔が見える商品づくり。できる限り生産者ごとにロットを分けて仕込み、特にできの良かった単一畑のワインには、ラベルに生産者の名前を入れる。それは栽培農家にとってモチベーションの上がることであり、同時にシビアな評価にさらされることでもあります。

「『今年はごめん!』とか(笑)、そういう年もありますよ。でも、そうやって生産者の方と一緒になってワインをつくっていけば、それが自然とうちの味になっていくと思います」と加藤さんは語ります。

「いいぶどうが、いいワインになる。90パーセントはぶどうの力です。いかにいいぶどうを栽培していただけるか、それは、栽培される方の考え方や努力の現れです」。加藤さんは謙虚に続けます。

「毎年ぶどうは違うので、ワインもその年々の味になるのが当然。自然のものですからね。ぶどうの良さをそのまま生かした、その年ごとの特徴を引き出したワインをつくりたいです」

観光客も訪れる
誰もが楽しめるワイナリー

安曇野ワイナリーには、ワイン目当てにやって来る人はもちろん、上高地へ、あるいは白馬への行き帰りに立ち寄る観光ツアー客も大勢訪れます。

そうした人たちのため、無料の試飲カウンターでは常時4〜6種類のワインをそろえ、もっと飲みたいという人のために、蔵出しの限定品などをそろえる有料試飲カウンターも設けています。

お酒を飲めない人に、あるいはドライバーズドリンクとして供している「安曇野のむヨーグルト」は、ワイナリー敷地内にある工房で安曇野産生乳だけを用いて限定生産されており、おみやげ品としても高い人気を誇ります。

そしてワイナリー敷地内にはシャルドネ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンの畑が広がり、季節ごとのぶどうの様子、あるいはそこで作業する人々の様子を間近に見ることができます。風の吹き抜けるテラスで試飲を楽しんで、ぶどう畑の散策を楽しむ人も多いとか。

「うちへ来てくださるのは、ワイン好きな方だけではありません。普段ワインを飲まれない方にとっても、ワインへの入り口でありたいと思っています」。そして、理想とするのは、「開放的で多くの人が訪れ、誰もが楽しめるワイナリー」と小林さんは語ります。

手入れの行き届いたぶどう畑。清潔に保たれた醸造場。明るいワインショップ。そしてコミュニケーションの取れた人間関係。こうした環境のもと、クリアなワインが生まれています。そしてこれから時を重ねるごとに、より芳醇なワインがここ安曇野で醸されていくでしょう。

 

(取材・文/塚田結子  写真/平松マキ)

有料試飲カウンターには、限定品などもそろう

有料試飲カウンターには、限定品などもそろう

セラーは見学可能。2008年のファースト・ヴィンテージから5年分のワインが熟成されている

セラーは見学可能。2008年のファースト・ヴィンテージから5年分のワインが熟成されている

小林さん
小林 龍義(こばやし たつよし)

2008(平成20)年の安曇野ワイナリー設立時より取締役総支配人を務める。

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加藤 彰(かとう あきら)

安曇野ワイナリー設立に参加。醸造責任者を務める。

安曇野ワイナリーロゴ
安曇野ワイナリー株式会社

所在地 〒399-8103 長野県安曇野市三郷小倉6687-5
TEL 0263-77-7700

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