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ワインのつくり手を訪ねて

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東御市Vol.38 Man Malu Noka(まんまる農家)波田野信孝

ヴィラデストで学び、夢の実現にむけて柔らかい心で一歩ずつ

高麗人蔘小屋が目を引く鞍掛地区に
遊び心溢れるヴィンヤード

「降水量が少なく、水はけの良い土地」とは、ブドウ栽培に適した土地を語るうえでよく使われる言葉ですが、この条件が適しているのはブドウだけではありません。
漢方薬に用いられる高麗人参もそのひとつ。近年、ワイン用ブドウの産地として名を上げた東御市は、高麗人蔘の収穫量でも全国トップクラスを誇ります。その歴史は古く、160年前の江戸時代から大切に受け継がれてきました。
栽培の難しさや安価な輸入品に押され、農家が減少するなか、未だ藁葺き屋根の「高麗人参小屋」が点在する東御市鞍掛地区。その南斜面にMan Malu Nokaの自家農園はあります。隣には、やはり漢方に用いられる芍薬の畑と、Vol.25で登場した「ぼんじゅーる農園」の畑もあります。

農園主の波田野信孝(はたののぶたか)さんに、収穫を目前に控えたシャルドネとメルローのブドウ畑を案内していただきました。すると、たわわに実ったシャルドネの伸びた枝の先に現れたのは鹿の頭蓋骨。
「畑を掘っていたらでてきたので、せっかくだから支柱に飾りました」と、面白そうに笑います。
かたわらに積み上げられた山のケルン(道標)のような石の小山についてたずねると「苗を植えるときに出てきた石を積みあげていたらこうなっただけ」なのだそうですが、石と石のすき間に土が溜まりそこから蔓草が生え、いい雰囲気。
波田野さんの楽しみながら農作業している様子が感じられるヴィンヤードです。

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ヴィラデストで委託醸造しているワインは、メルローとシャルドネの2種。醸造責任者の小西超さんと相談しながら、どんな感じのワインにするのか決めている。

ヴィラデストで委託醸造しているワインは、メルローとシャルドネの2種。醸造責任者の小西超さんと相談しながら、どんな感じのワインにするのか決めている。

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「衣・食・住、全てを楽しむ」という玉村さんの考えに共感した若者が多く集まるヴィラデスト。
「まるで学校のようなところで、多くの従業員が独立していきました。最近、玉村さんは本当にアルカンヴィーニュという学校をつくってしまいましたけれどね」

「衣・食・住、全てを楽しむ」という玉村さんの考えに共感した若者が多く集まるヴィラデスト。 「まるで学校のようなところで、多くの従業員が独立していきました。最近、玉村さんは本当にアルカンヴィーニュという学校をつくってしまいましたけれどね」

ヴィラデストとの運命的な出会い

21〜22歳の頃、アルバイトをしてお金が貯まると、バイクに乗って全国を旅していた波田野さん。ものづくりが好きで、料理、工芸、建築などに興味があり、いろいろなものを見てきたそう。
旅から帰って来て、これから何をしようかと考えていた時に、エッセイストの玉村豊男さんが書いた記事を読み、その生き方に興味を持ちます。そこで直接お話を伺いたいと、玉村さんがオーナーを務めるヴィラデストガーデンファームアンドワイナリー(以下ヴィラデスト)を訪ねました。

すると、その場所は最初のバイク旅行で「きれいなところだな」と、立ち寄った場所の近くだったのです。スケッチブックにもその時に描いた絵が残されていて、運命を感じたといいます。
そしてヴィラデストがスタッフ募集をしていることを知り、その場で応募。採用され、2006年に東御市へ移住してきたのです。

飲食店で働いた経験があったので、レストランへ配属されるとばかり思っていた波田野さん。その予想に反してワイナリー部門へ配属されることになりました。まさか自分がワインを造ることになるとは思っていなかったそうですが、飲ませてもらうと、とてもおいしかったので「日本でもこんなにおいしいワインがつくれるのだ」と感動したそうです。

栽培と醸造を担当し、やがて主任という立場を任されるようになると、地元の農家からも認められるようになります。
そして「いつか独立したい」と考えていた波田野さんに、転機が訪れたのは2012年のこと。ヴィラデストへ原料供給していた契約農家から「これからは生食用ブドウ一本でやっていきたいから、俺のワイン用ブドウの畑をやってみないか」と声がかかったのです。そうして自分の畑を持った翌年に独立。ヴィラデストで委託醸造し、ファーストヴィンテージをリリースしました。

「玉村さんはワインだけではなく、畑もパンも料理も、生活に関わる全てを楽しむということを提案している人です。そのことに共感し、自分も何かしたい、勉強したい、そしてゆくゆくは独立したい、と思っている人がヴィラデストへ集まります。ワイナリー部門だけでなくレストラン部門でも、独立後にそれぞれの地元や東京などで活躍している人がたくさんいます」と、波田野さん。

お互いに独立したあとも交流があり、レストランでManMaluNokaのワインを取り扱ってもらったり、ワイン会員になってもらうなど、一緒に過ごした仲間との関係は同僚から同志へと変わりました。

こだわりを強く持ちすぎず、自分の興味を追求したい   

今の波田野さんの目標は、ワイナリー開設。
日本で初めて農家自家製の生チーズを作った工房で知られる、アトリエドフロマージュの近くに開設場所が決まったのだそう。
現状でも、特区で必要とされる醸造量である2000ℓのワインを造れるだけのブドウを栽培していますが、あと少しだけ畑を増やそうと考えています。その一方で、たくさん増やす必要はないとも。というのも、周辺にはワイン用ブドウを栽培している農家がたくさんいるので、そこで栽培されるブドウを引き取ったり、委託醸造を受けたりしようと考えているからです。
委託醸造は「農家さんのやりたいことを聞いて寄り添いながら、きちんと責任を持って醸造したい」とのこと。

また、ワイン一本でやっていくのではなく野菜も栽培している波田野さん。横堰地区に住む若手農家6名で構成するYO農会(ヨーノーカイ)のメンバーでもあり、いずれは自分や仲間たちがつくった野菜を販売するマルシェやカフェもつくりたいと、構想は広がります。

「あまり脱線しても良くないから、まずはワイナリー設立を目指します。ヴィラデストで完全に叩き上げの状態からスタートした僕がワイナリーをつくることができれば、財力がないと諦める人がいる現状で、希望の星になることができる。そういう意味でも、ちゃんとしたワイナリーを作って成功例になりたいです」と、熱く語ります。

 

(取材・文/坂田雅美  写真/平松マキ)

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「あまり製法にこだわらず、この風土の中で一番おいしいワインを造るために必要なことをしたいです」。ワイナリー開設が待ち遠しい。

「あまり製法にこだわらず、この風土の中で一番おいしいワインを造るために必要なことをしたいです」。ワイナリー開設が待ち遠しい。

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波田野信孝(はたの のぶたか)

1983年、埼玉県鴻巣市出身。ヴィラデストで栽培と醸造を7年間担当した後、2013年に独立。委託醸造でワインを造る一方、ヴィラデストに原料供給もしている。
現在、ワイナリー建設資金を集めるため、一口10万円のワイン会員を募っている。開業後に毎年ワイン8本を5年間、計40本届けるをほか、ワイン全品を1割引きで買える特典がある。100口集める予定で、現在90口集まっている。
妻と子どもの4人暮らし。

ワインのご注文は下記までお問い合わせください
FAX 0268-55-7412
Mail n.hatano0624@gmail.com

Man Malu Noka

所在地 長野県東御市鞍掛 (ワイナリーではないので訪問はお控えください)
TEL 080-6936-9646
URL http://manmalunoka.naganoblog.jp/d2016-03.html

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