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ワイナリーへの道 ~アルカンヴィーニュからはじまる物語~

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Vol.14 ワイナリーへの道は選択に継ぐ選択

自分の求めるワインに近づくために 

vol.4とvol.11でもおなじみの若生ゆき絵(わこ ゆきえ)先生に醸造工程と発酵管理の話をうかがいました。

はじめに、赤ワインと白ワインの一般的な醸造工程を説明しておくと…。

【赤ワイン】
収穫→選果→除梗・破砕→発酵→圧搾→澱引き→後発酵→樽またはタンク熟成→清澄・濾過→瓶詰・熟成

【白ワイン】
収穫→選果→除梗・破砕→圧搾し、果皮や種子を取り除く→発酵→澱引き→樽又はタンク熟成→清澄・濾過→瓶詰・熟成

大きな違いとして、白ワインは皮と種を除いて搾ったジュースを発酵させるのに対し、赤ワインは一緒に発酵させてから搾り、さらに後発酵させます。このため、赤ワインには色や渋みが含まれるのです。

そして、この工程でいろいろな選択をしていくことが、自分の求める味のワインに近づいていくことになります。

たとえば、除梗(軸から実を外す)を行うのか、行わないのか。行う場合は機械と手作業どちらにするのか。
圧搾に使うプレス機はどのような機械を選択するのか。
発酵タンクの種類は何を選ぶのか。
天然酵母と添加酵母、どちらを使うか。
発酵の温度を何℃で行うのか。
清澄と濾過をするのかしないのか。
このほかにもまだまだありますが、一つひとつ丁寧に選択し、ワインの香りや味の構成を決定していきます。

若生先生があらかじめ用意してくださったブドウや果汁の状態を確認しながらそれぞれの選択に応じたデメリット、メリットも一緒に教わりました。

ステンレスタンクと樽、どちらを使って熟成させるのか。
また、樽を使うのであれば新樽と古樽、どちらにするのか。
選択肢がたくさんある。

ステンレスタンクと樽、どちらを使って熟成させるのか。 また、樽を使うのであれば新樽と古樽、どちらにするのか。 選択肢がたくさんある。

一つ、ひとつの選択によってワインの味が変わる。
その都度確かめ、自分の求めるワインに近づけるようにする。

一つ、ひとつの選択によってワインの味が変わる。 その都度確かめ、自分の求めるワインに近づけるようにする。

4月中旬。あづみアップルではこの時期に、事前に仕込んでおいた果汁を発酵させている
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シンワフーズケミカル株式会社の川上先生。
自社の資材を実際にみせていただく。

シンワフーズケミカル株式会社の川上先生。 自社の資材を実際にみせていただく。

添加酵母を使って、発酵のマネージメント

醸造関連の講義は続きます。
講師は、添加酵母などの食品添加物から新樽までいろいろなワイン資材を販売する、シンワフーズケミカル株式会社 山梨営業所 所長、川上晃(かわかみ あきら)先生です。

取り扱っている商材をベースに「ワイン発酵のマネージメント」と「濾過」について教えていただきました。
ひとくちに添加酵母といってもさまざまな酵母が開発されています。
たとえばオフフレーバー(異臭)を抑える酵母、ある香りを強化する酵母、エタノール(アルコールのひとつ)生成が低い酵母などがあり、ワインのタイプやブドウの状態により選ぶことが可能です。
酵母選びは、ワインを造るうえでとても大切な選択のひとつとなってきますが、一方で、発酵中にトラブルが起こってしまった場合に用いる助剤についてのの知識も必要です。
川上先生は葡萄酒技術研究会認定エノログ(ワイン醸造技術管理士)ということで、非常に詳しく教えていただきました。

そして、濾過。瓶詰め前の最終工程として大切な作業のひとつですが、ここでも濾過機や助剤にいろいろなタイプがあり、選択が必要です。
もちろん清澄や濾過をしないという選択肢もありますが、自然な風味を残せる一方で酵母や乳酸菌などの残留により再発酵や微生物汚染などのリスクが増えます。

アルカンヴィーニュで使っているものはシートタイプの濾過機。
ほかにも大型の遠心分離や、水面に対し平行な流れを作ることで表面堆積を抑制するクロスフローといったタイプもあります。
そして僕たち、個人でワイナリーを目指す人にとってお勧めなのがカートリッジタイプということで、試験用の機械を使って実演してくださいました。

それにしても、圧搾機や発酵タンク、濾過機などワインづくりに必要な機具はたくさん。 お金がかかりますね…。

ブドウ栽培に適した扇状地

さて次は別の日のお話になりますが、東京大学空間情報科学研究センター センター長の小口高(おぐち たかし)先生を講師にお招きして、アルカンヴィーニュ周辺の地質を中心に、ワインづくりにとっての地形学を学びました。
小口先生は、諏訪市のご出身。地形学者として、東京大学で教鞭をとる一方、地理情報システム(GIS)を用いて地形解析し、企業や公共機関が土地活用や防災計画のアイデアを産み出すことに一役買っています。
また、地形学の国際誌 Geomorphology の編集委員長を2003年から努め、多数の論文を編集・査読するなど、国際的に活躍されている方です。

1〜2時間目は「扇状地や三角州が河川の浸食作用によってどのように形成されたのか」など地形の基礎的なことを学びました。
扇状地とは、狭い山間を抜けた川が広い平地に出たところに土砂が堆積してできた土地のこと。河川の浸食によって堆積された土砂の粒が大きいため水はけがよく、果樹が育つ環境に適しています。最大のブドウ産地、山梨県甲州市勝沼の京戸川扇状は典型的な扇形をした、きれいな扇状地なのだそう。

そして、山岳地帯である長野県も扇状地が非常に多く、水はけが良いため、昔から果樹が多く栽培されてきました。
アルカンヴィーニュ周辺は、浅間山の火山活動や千曲川とその支流によって浸食された扇状地と丘陵地で混成された地形です。また、上田盆地は北の浅間・烏帽子火山群の南麓扇状地や南の小諸市八重原地区、西の塩田平など、6つの堆積面に分かれています。
座学のあとはバスに乗って実際にその地形を見に行きました。
見慣れているはずの風景でも、別の視点から見るといつもと違うことが感じられ、とても面白かったです。そのうちに「お酒があれば、なお良し」と、すっかり遠足気分に浸り、楽しかったですね。

最近ではドライブしていても、外の風景を見て「あぁ、あそこでブドウを植えたら良さそうだ」などと、反射的にに考えるようになってしまいました。

3D地図を使っての情報解析などで注目されNHKクローズアップ現代に出演されるなど、多方面でご活躍の小口先生。

3D地図を使っての情報解析などで注目されNHKクローズアップ現代に出演されるなど、多方面でご活躍の小口先生。

小諸市八重原地区の扇状地。
長野県は山岳地帯なので、果樹に適した扇状地がたくさんある。

小諸市八重原地区の扇状地。 長野県は山岳地帯なので、果樹に適した扇状地がたくさんある。

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著者成澤篤人

シニアソムリエ
1976年長野県坂城町出身。イタリアンレストラン「オステリア・ガット」ほか長野市内で3店舗を経営。NAGANO WINEを普及するための団体「NAGANO WINE応援団運営委員会」代表。故郷・坂城町にワイナリーをつくるため、2015年春からアルカンヴィーニュ内に設置された日本初の民間ワインアカデミー「千曲川ワインアカデミー」で第1期生として学びます。

日本ワイン農業研究所
アルカンヴィーニュ (ARC-EN-VIGNE)

「ARC」は「アーチ(弧)」を意味し、人と人をワインで繋ぐという寓意を込めています。フランス語で虹のことを「アルカンシエルARC-EN-CIEL」(空にかかるアーチ)といいますが、その「空CIEL」を「ブドウVIGNE」に代えて、名づけられました。ブドウ栽培とワイン醸造に関する情報を集積する、地域のワイン農業を支えるワイナリーとして、また、気軽に試飲や見学ができ、ワインとワインづくりについて楽しく学び、語り合うことができる拠点です。

http://jw-arc.co.jp