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ワイナリーへの道 ~アルカンヴィーニュからはじまる物語~

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Vol.13 自分の目指すスタイルのワインを決定し、個性あるワインづくり

野生酵母でワインを醸す

野生酵母で醸したワインはその土地に存在している微生物の力を借りて、複雑な香りを持つ野趣あふれる仕上がりになります。
そのため「その土地のテロワールをより強く反映させる」と考えられています。

今回は、北海道の函館市元町にあるワイナリー、農楽蔵(のらくら)の佐々木佳津子(ささき かずこ)さんをお招きして「野生酵母を使ったワイン造り」のお話をうかがいました。

佐々木さんは東京農業大学農学部醸造学科とブルゴーニュ大学醸造学部を卒業し、フランス国家認定醸造技師(DNO)の資格をお持ちの醸造家です。

栽培を担当する夫の佐々木堅(ささき けん)さんとともに、函館市元町というクラッシックな町に溶け込むマイクロワイナリーを営んでいます。

北海道産ブドウを100%使用し、Vin nuture(ヴィン ナチュレ)と呼ばれる「野生酵母発酵、低~無亜硫酸、無ろ過」で醸造することを基本としたそのワインは、愛好家の間で人気を集めています。

ということで、早速「野生酵母を使ったワイン造り」を教えていただきました。

収穫したブドウをつぶしただけの、いわゆる「ブドウジュース」をお酒に変えるには、酵母の働きが必要不可欠です。
ワイン造りでは、自然のなかに存在する野生酵母で発酵させるか、培養酵母を添加して発酵させるか、酵母の選択をする必要があります。
もともとブドウには野生の酵母がついていますし、日本酒の醸造でよくいわれる、蔵に棲み着いている酵母「蔵付き酵母」はワイナリー内にも存在します。 そして空気中にも存在していますので、ブドウを潰しておけばそうした野生酵母によって自然と発酵してお酒になります。
野生酵母でワインを造ることを選択した場合は、健全な発酵を促すためにさまざまなリスクがあることを知らなければなりません。

糖を発酵させてアルコールに変えてくれる“良いヤツ”、 たとえば、サッカロミセル・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)という野生の酵母菌がメインで働いてくれればいのですが、空気中にはほかにもたくさんの酵母やカビなどがいます。このなかの“悪いヤツ” (酢酸菌や産膜酵母、ブレタノマイセスなど) が活動してしまうと、健全な発酵をしてくれません。

この“悪いヤツ”は亜硫酸が抑えてくれるのですが、こちらも添加しないとなると、さらにリスクが高まります。

健全に発酵しなければ、1年かけて一生懸命育てたブドウがすべて台無しになり、商品にならないため収入もなくなってしまいます。

このようなリスクを回避するため、佐々木さんのこれまでのさまざまな経験をふまえて「どのような菌がどう作用するとワインをダメにしてしまうのか」などもうかがいました。

北海道の函館市元町にあるワイナリー、農楽蔵の佐々木佳津子先生。
野生酵母で醸す魅力やリスクとその回避方法について教えていただきました。

北海道の函館市元町にあるワイナリー、農楽蔵の佐々木佳津子先生。 野生酵母で醸す魅力やリスクとその回避方法について教えていただきました。

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ワインの造り手としての立場でテイスティング

続いて東御市にある結婚式場、ラヴェリテさんに移動して、実際にワインをテイスティングしながらの授業です。
テイスティングしたのは北海道余市産のブドウを使ったワイン12種。
「ケルナー」「ミュラー・トゥルガウ」「ピノ・ノワール」の3品種ごとに飲み比べました。

 製造工程の違い(除梗破砕の有無、醸しの時間、酵母の種類、亜硫酸の有無など)によりワインがどう違ってくるのかを確かめながらテイスティングしました。

ソムリエとしては「お客様に勧める」という観点でテイスティングし、多少ネガティブな部分はあっても、それを補う良い部分を見つけるようにしています。
今回は、つくり手の立場として、どうしてこのような味になったのかを知り、それを踏まえて「どういう風に自分の目指すスタイルを決定するのか」を考えながらテイスティングしました。

隣の席に座った同期生に、テイスティングしたなかから好みのワインをたずねると、同じ品種でも自分と違う銘柄の名前が返ってきました。やはり、それぞれ違うものですね。
いつか、お互い自分のワインをつくる日が来たら、それぞれの個性を生かして色んなバリエーションのNAGANOワインが生まれると面白いなと、未来に想いを馳せました。

●写真キャプション
メインカット 左から【ケルナー6種】
○千歳ワイナリー「北ワイン ケルナー2014」
○ココファーム「こころみシリーズ 月を待つ2014」
○タキザワワイナリー「ケルナー2014」
○農楽蔵「ノラポン・ブラン2014」
○サッポロ「ケルナー辛口2013」
○北海道ワイン「ケルナー2014」

サブカット(上)左から【ミュラー・トゥルガウ3種】
サッポロ「ミュラートゥルガウ2014」
○タキザワワイナリー「ミュラートゥルガウ2014」
○農楽蔵「ノラケン・ブラン2014」

サブカット(下)左から【ピノ・ノワール3種】
サッポロ「余市ピノ・ノワール2012」
○千歳ワイナリー「北ワインピノ・ノワール2013」
○ドメーヌ・タカヒコ「パストゥグラン2012」(ツヴァイゲルトレーベとブレンド)

     

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著者成澤篤人

シニアソムリエ
1976年長野県坂城町出身。イタリアンレストラン「オステリア・ガット」ほか長野市内で3店舗を経営。NAGANO WINEを普及するための団体「NAGANO WINE応援団運営委員会」代表。故郷・坂城町にワイナリーをつくるため、2015年春からアルカンヴィーニュ内に設置された日本初の民間ワインアカデミー「千曲川ワインアカデミー」で第1期生として学びます。

日本ワイン農業研究所
アルカンヴィーニュ (ARC-EN-VIGNE)

「ARC」は「アーチ(弧)」を意味し、人と人をワインで繋ぐという寓意を込めています。フランス語で虹のことを「アルカンシエルARC-EN-CIEL」(空にかかるアーチ)といいますが、その「空CIEL」を「ブドウVIGNE」に代えて、名づけられました。ブドウ栽培とワイン醸造に関する情報を集積する、地域のワイン農業を支えるワイナリーとして、また、気軽に試飲や見学ができ、ワインとワインづくりについて楽しく学び、語り合うことができる拠点です。

http://jw-arc.co.jp