石井秀樹オーナーシェフと、マダムでソムリエの晶栄さん。シェ・マリーは、夫婦ふたりで4室だけのお客様をもてなすオーベルジュです。
木立に隠れるように佇む建物の中に入ると、そこは大人がくつろげる和らいだ空気感。お客様の9割方がリピーターというのも、うなづけます。
なかにはチェックイン早々に、ワインコンシェルジュルームに直行して、今夜のワインを選ぶお客様も。
「早めにワインを選んでいただければ、ベストな状態でお出しできます。飲む直前に抜栓すると、花開くまえに飲み終わってしまうこともありますし、強制的なデキャンティングで、いじめてしまうことも。特にNAGANO WINEは、まだ木が若いワイナリーも多くて繊細ですから」(晶栄さん)
初めてのお客様にもチェックイン時の何気ない会話から、普段飲んでいるワインやその日の気分などを聞いて、ふさわしいワインを提案してゆきます。
「さりげなくお好みを引き出すのが、私の役割。料理との最高のマリアージュで、蓼科の空気、シェ・マリーの雰囲気を含めて楽しんでいただきたいと思います」
取り揃えたNAGANO WINEは100種以上。試飲だけでなく、実際にワイナリーを訪ねて納得したものだけを置いています。そのこだわりのわけは、当初から料理もワインも地産地消を目指してきたからと明解です。
石井シェフは、まだその言葉さえ耳慣れない20年近く前から、地産地消に取り組んできました。
健康に良いものを求めてマクロビオテックを学び、さらに日本人の舌にあう味を探して味噌や醤油、一番だしなど、和の素材も取り入れて、石井料理ともいうべき身体に優しく美味なフレンチに至ります。
ホールの晶栄さんと絶妙の呼吸で提供のタイミングを見計らい、量も微調整して提供するフレンチは、20歳代から100歳近いお客様も満足されているそうです。
2009年4月に、9室を4室に改装。ワインコンシェルジュルームや読書ルームなどを備え、滞在そのものが楽しめるオーベルジュになりました。
4室はそれぞれ趣が違い、部屋指定できますが、予約はお早めに。完全予約制で食事のみも可能。提携タクシーによる送迎サービス(有料)も利用できます。
(取材・文/平尾朋子 写真(内観を除く)/平松マキ)
地元野菜のプランシャ焼 鶏の燻製 卵黄と行者ニンニクのソースを添えて
NAGAN WINEの歴史を物語るようなワインたち
暖炉とランプのあるダイニング。4組のゲストが至福のディナーを味わう
大切な人と過ごす客室は、わが家のようなくつろぎに満ちている
1967年名古屋市出身。名古屋市で自動車ディーラーに勤務し、建設会社勤務の石井秀樹さんと出会う。ペンション開業を夢見て、1994年、新婚の2人で長野県へ移住し、秀樹さんはフレンチを晶栄さんはサービスを学ぶ。1996年、車山高原のリゾートインで支配人を務めたのち、1999年にオーベルジュ ドゥ シェ・マリー開業。NAGANO WINEは車山高原時代から扱い、その成長を見つめてきた。ソムリエ。ワインマスター。フードオーガナイザー。