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ワインと器

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Vol.8 寺西将樹さん/東御市在住

つくって売って生活する。暮らしと仕事の美しいあり方

東御市海野宿。北国街道の宿場町としての風情を色濃く残す街並の一角に、寺西将樹さんと真紀子さん夫妻が営む「ガラス工房 橙」はあります。

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柳がゆれ、水路が走る通りに面して構えた店舗では、奥の工房でつくられたグラスや器、オブジェなど、さまざまな吹きガラスの作品が並びます。

2階は居心地のいいカフェになっていて、卯建(うだつ)の上がる白壁の街並を眺めながら、夏は名物のかき氷、涼しくなればコーヒーや紅茶とともに自家製のケーキがいただけます。

先頃カフェのメニューに加わったのが「リュードヴァン」のシードルです。リュードヴァンは小山英明さんが営む東御市にあるワイナリーで、自社農園で収穫されたワイン専用品種のぶどうから上質なワインを醸します。

東御市産のふじりんごからつくられたシードルが注がれるのは「くるみシードルグラス」。同じく東御市特産のくるみの殻を灰にして、ガラスの原料に混ぜ込むと、夏の青胡桃(あおくるみ)をうすめたような、ほんのり淡い緑色に。手吹きガラスらしい、やわらかな曲線と相まって、レトロな雰囲気が漂います。

実はこのグラス、小山さんの依頼をもとにつくられました。発案者である小山さんは次のように語ります。

「シードルって気兼ねなく飲むものだから、日常のグラスで飲んでもらいたかった。コップのような形よりは、ちょっと足がついている方がいいかなと。それから香りの広がり方と口あたりから、ああいう形がベストかなって。寺西さんの手吹きのグラスだと、ふわーっと口にあたって、いいんですよ」

寺西さんは旧丸子町生まれ。いつかどこかで見たガラスづくりの現場に憧れを抱きつつも、進学先の大学にはガラスの専攻コースがなかった。そこであちこちのガラス工房を訪ねてまわり、吹きガラスの基礎を身につけていきます。

やがて横浜のガラス工房にバイトで入り、師と仰ぐ職人さんについて約6年技術を磨きます。そしてそこで長崎県出身の真紀子さんと出会います。独立したふたりはこの地に工房を構え、結婚します。

「ここは実家の近所なんです。せっかく地元に戻るんだったら、より良い場所で、人が集まる場所でと思って。勤めていたところと同じように、お店と工房が一緒になっていて、お客さんが近いといいなと思っていました」

重要伝統的建造物群保存地区に指定されている古い街並に工房を構えるにあたっては、火を扱う稼業ゆえ気をつかいますが、「ここで新しい産業を生み出すことに参加できれば」という思いもありました。

長らく居住スペースとしていた2階をカフェに改装したのが5年前の2009年のこと。以来、ガラスを買う人、工房を見学する人だけでなく、カフェのおいしいメニュー目当ての人も加わって、日々いろんな人が訪れます。今やここは海野宿になくてはならない存在です。

 

(取材・文/塚田結子  写真/平松マキ)

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寺西さんの手により生まれたばかりのシードルグラス。熱々はほんのり黄色。冷めるごとに淡い緑色になる

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「ひとりよりふたりの方がより正確に、より多くつくることができる。特に種をつける作業はひとりでは大変」。すかさず真紀子さんがフォローにまわる

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取材時、たまたまシードルの納品に訪れたリュードヴァンの小山さんと。東御市のフレンチの名店「フルール・ド・ペシェ・モモカ」の名取シェフも加え「男子会」を開く仲の良さ

真紀子さん手製のシロップとふわふわのかき氷が絶品。「氷の塊を少し室温に置いておくのが秘訣です」

真紀子さん手製のシロップとふわふわのかき氷が絶品。「氷の塊を少し室温に置いておくのが秘訣です」。寒い季節は地粉を用いた気まぐれ日替わりの自家製ケーキがおすすめ

居心地の良い2階のカフェスペース。メニューは工房製のグラスや器に盛られるので、使い心地を確かめることができる

居心地の良い2階のカフェスペース。メニューは工房製のグラスや器に盛られるので、使い心地を確かめることができる

寺西 将樹(てらにし まさき)

1969年長野県旧丸子町生まれ。1989年に吹きガラスをはじめる。93年、東京造形大学を卒業後、横浜のガラス工房に勤務。99年東御市海野宿に「ガラス工房 橙」を築房

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作品を購入できる場所
「ガラス工房 橙(だいだい)」
住所:東御市本海野1071-3
電話:0268-64-9847
http://www.glass-studio-daidai.net/