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ワインと器

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Vol.6 島るり子さん陶芸家/伊那市在住

手の感覚を信じて、丁寧に
自然の力を借りてつくり出す器

かつて天領だった伊那市手良は、美しく豊かな自然に囲まれたところ。島るり子さんは、この地にどっしりと構える古民家で手をかけることを楽しみながら暮らし、そして器をつくっています。

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エビと豆のアヒージョ、ズッキーニとプチトマトのバジルソテー、レタスときゅうりの海苔サラダ、シマウリと大葉の即席漬け、キャベツのコトコト煮込み、バーニャカウダ、じゃがいもとタマネギのマスタード和え。

ワインのある食卓を撮りたいというお願いに応えて島さんが準備してくださった料理が、蔵の戸を天板代わりにしたテーブルに、次から次へと並びます。

料理はもちろん、器も島さんの手づくり。そして野菜の多くも裏の畑でつくられたもの。「畑は近所のお友だちがいろいろやってくれてるの」と種明かしする島さんですが、それにしても何と豊かな食卓でしょう。

粉引きのやわらかな白、使うごとにツヤを増す焼き締めの茶、直火にかけられる耐熱の黒。それぞれの表情や役割を持つ器が、料理をひきたてます。どれもがしみじみと美しく、そしておいしい。

「手をかけさえすればいいわけではないこと、自然の持ち味を生かすこと。おいしさの秘訣があるとしたらそんなことで、それは器づくりにも通じる」のだと島さんは言います。

もともと肌が弱いうえに働き者の島さんの手は、痛々しいほどに荒れているのですが(それが原因で作陶の道を断念しかけたことも)、器づくりでも道具をあまり使わずに、つい手を使ってしまうとか。

ロクロに向かってすーっとひと息に土を引き、片口ならば手できゅっとすぼめる。白化粧には、指や息を吹きかけたあとが残る。手にしっくりと馴染み、温もりや息づかいを感じる器は、そうやってつくられるのです。

かつて島さんは、結婚と出産を機に作陶から離れていました。幼子を連れて伊那に移り住み、やがて器づくりを再開させます。

独身の頃は何をつくったらいいのか、いつも考えていたという島さんですが、13年ぶりに土に触れると「器が自然に生まれ出てきた」といいます。

「自分の欲しいものが手から出てくる、そんな感じでした」。家事に育児にと、家族のために休むことなく働いてきた島さんの手は、どんな器が暮らしに必要で、どんな形がちょうどいいのか、すっかりわかっていたようです。

 

(文/塚田結子  写真/平松マキ)

 

※本文コメントの一部は、島るり子さんの著書『島るり子のおいしい器』(天然ブックス)より引用しています

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網戸代わりの竹の格子から、やわらかな光が射す。粉引きの白から赤味がかった土がのぞき、ふっと吹きかけた息づかいがそのまま残る

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年に一度、穴窯に火を入れる。すぐそばに窯焚き用の小屋を建て、まわりに好きな木を植えた。島さんは「終の住処はここ」と笑う

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黒の耐熱の器は、直火はもちろんオーブンにも入れられる。煮込み料理も炒め物も、アツアツのうちにそのまま食卓へ

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仕事以外はほとんどの時間を過ごすという台所には、保存食品や乾物がずらり。島さんの器同様、その料理にもファンが多い

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手良の中でもひときわ立派な古民家。赤い屋根が青空にそびえる。「草草舎」の字がうがたれた、錆びた大きな鉄板が目印

島 るり子(しま るりこ)

陶芸家。1952年、新潟県柏崎市生まれ。高校卒業後、2年間、京都の陶芸家に弟子入り。21歳から丹波の石田陶春(政子)氏の元で修業し、24歳で柏崎に登り窯を築く。その後、結婚と出産を機に焼き物を中断。1989年、伊那市に移り住む。1992年に穴窯を築き、焼き物を再開する。

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作品を購入できる場所
「草草舎」
住所:伊那市手良沢岡1273-1
電話:0265-72-4224