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ワインと器

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Vol.5 後藤睦さん木工作家/御代田町在住

木を知り、暮らしを知ることで生まれた
普段づかいの木の器

ロクロ細工の技を駆使して挽き出される器たち。ふっくらとしたオイル仕上げのパン皿。黒漆が美しい軽やかな鉢。木の風合いが目にも手にもやさしい器のつくり手は、後藤睦さんです。

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木の器は、汁物も油物も、和も洋も、なんでも受け止める。特にサラダやパンは、木が適度に水分を吸うのでパリッと仕上がる

後藤睦さんの木のパン皿は、ふっくらとした厚みが縁の部分で外側へ反り返るようにしてシャープなラインに収束していく。言葉にするのがもどかしいその形は、やわらかでいてきりりとした端正さ。

「この形が面白いのは、木のいろいろな表情が出やすいこと。木目が生きる形がいいなと思っています」。使う材はクルミ、カバ、桜などの広葉樹。

そしてオイルフィニッシュでその木目をより美しく仕上げます。「油物でも汁物でも大丈夫。実家でトンカツがのって、ソースがダーッとかかってましたが大丈夫でした(笑)」

この形を生み出すまでには葛藤があったといいます。「薄くしすぎないようにがんばっている感じです」というほどのロクロの腕前と、「個性が出すぎるのは好きじゃない。シンプルなのが好き」という志向が相まって、当初は薄づくりの繊細な器ばかりをつくっていたとか。

「でも実際にお客さんと接するようになって、これで長く使ってもらえるのかと心配になってきたんです」。形を追い求めるだけではなく、いかに使いやすい器であるか。つくり手としての思いは、後藤さんの暮らしとともに変化してきました。

ロクロに向かい、ものづくりだけを考えれば良かった職人時代を経て、今では働く妻とともに幼子の世話をし、生活を回していく日々。そうしたなかで生まれるのは、まさに普段づかいの器です。

「自分が思っている以上に気に入ってくれる方がいるので励みになります。これでいいのかなと思いながらつくっているので。パン皿なんか特にそうです。同じものをずっとつくっていると、迷うこともあるんです」

独立して3年。木工への道に踏み出してからを数えれば10年が過ぎました。まだまだ迷いや不安を抱えながらも「やりたいことがいっぱいある」と、思索と試作を重ねる日々です。

 

(文/塚田結子  写真/平松マキ)

 

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漆に硝煙(しょうえん)を混ぜて黒くする。使う材が一緒でも、仕上げによって質感が変わってくる

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使うのはほとんどが国産の木。「外国のもいいなと思うのは使いますが、なるべく日本の木を使いたいと思っています」

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広々とした工房にたくさんの機械が並ぶ。「器をつくるにはバンドソーとロクロがあれば事足りるんですけど。やりたいことがいっぱいあると持物が多くなるんです」

後藤さん

「木の器は、洗剤で洗ったりしてるうちに表面の脂分が落ちてしまうので、カサついてきたなと思ったら、きれいな油を塗ってあげてください。サラダ油でいいです」

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室(むろ)で乾燥中の器たち。漆の乾燥には適度な湿度を必要とする。手前右の白漆は模索中。「本当にきれいな白は出にくいんです」

後藤 睦(ごとう むつみ)

木工作家。1977年東京都生まれ。gomoku(ゴトウ木工所)主宰。2002年、飛騨国際工芸学園にて木工の基礎を学ぶ。卒業後は南木曽町のヤマイチ小椋ロクロ工芸所で修業を積む。2009年、長野県北佐久郡御代田町に移り、同町に木工所を開設。「クラフトフェアまつもと」「工房からの風」などに出展。伝統的な技法である木工ロクロの技術を生かし、日々の暮らしに溶け込む器や日常のものをつくる。

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作品を購入できる場所
「わざわざ」
住所:東御市御牧原2887-1
電話:0268-67-3135
http://www.waza2.com